45 / 138

第45話

「A組の友達に聞いちゃったんだ~黙ってるなんて水臭いぜ!」 「……」 「んでんで、付き合ったの?上田さんって頭良いし、真面目そうだけど可愛いよなぁ」 「…」 「ひのっちにすげー似合いそうだよなぁーああいう子」  じわりじわりと、胸の奥の方がチリチリして痛い。  ぎゅぅっと握りつぶされるように、苦しい。  俺に理性が無かったら、ヤスを殴って、碧生に怒鳴りつけていただろう。     理性が有ったから、下唇を噛んで耐えた。  碧生は戸惑いながら、ゆっくり口を開く。 「……付き合ってない」 「えぇーなんでぇ?もったいねぇー」 「…」 「断っちゃったの?まじで?」 「…うん」 「えぇーっ信じらんねぇ」 「…」 「なぁ?まりも知ってるだろ、上田さん」  不意に話を振られて、思わずビクッと身体が揺れた。  …やばい、俺。  今、どんな顔してた?  心底みっともない表情を露わにしてなかった?  くそっ、なんなんだよ。  つられるように碧生がこっちを向いたから、必死に微笑みを作る。 「…あ、あぁ、知ってるよ。A組で百合亜ちゃんの次に頭いい子でしょ」 「頭もいいし、胸でかいんだよな」 「そ、そうそう…顔の割にね。…碧生、」  もったいないじゃん、付き合えばいいのに。  そう言いたいのに、何故か言葉が出なかった。  パクパクと、声の出ない口を動かす。

ともだちにシェアしよう!