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第55話

 何組の何々さんって、具体的な名前を出されたらどうしよう。  …俺、その子のこと……多分、勝手に大嫌いになっちゃいそう。  カチコチと何回か秒針の音が聞こえて、やっと碧生の顔が上げられた。 「……優しくて」 「うん」  優しいひと。  うんうん、俺は当てはまってるよね。 「…かっこよくて」 「…うん」  …かっこいい…女?  かっこいい女って、…百合亜ちゃんみたいな感じ?  クールで大人な女の人みたいな?  よくわかんない。  かっこいい男なら、俺だよね。 「……俺のこと、理解してくれてて」 「…」  俺、めちゃめちゃ碧生のこと理解してるし。  …って、まさか。   ……碧生のタイプって、俺…?  と、思った瞬間。 「……毬也みたいな、ひと」  と、小さな声が風のように一度耳を通り抜けて、何秒か後にまた戻って来た。  「え」と思わず碧生の顔を凝視してしまうと、碧生が恥ずかしそうに目を逸らす。  ほんのりと、頬が赤みがかって色付いた。

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