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第62話

「……」  不自然に静まり返った部屋。  相反して、ぐちゃぐちゃに掻き混ぜられた感覚の感情だけが、ジタバタ暴れていた。    …好き。  俺は、碧生のことが好き。…なのか。  幼馴染で、同じ男。  一番近い他人で、一番大切にしたいひと。  今、空で碧生の顔を思い浮かべるだけで、ぎゅぅっと胸が苦しくなる。  ……これ、恋ってやつなの。  ほんとに恋?  よくドラマとか漫画で見るような、キラキラ輝いて愛しい感情が恋じゃないの。  …こんな、いろんなものが入り混じってドロドロして綺麗じゃない感情が、恋?  おなじ男なのに、いいのかな。  恋、しちゃってもいいのかな。  『抜くときに碧生のこと考えてやってみたら』  自分で考えてもわかんないんだから、やるしかないよね。  こういう時、自分の性格が単純で良かったなと思えるから不思議だ。  しばらくスマホのアプリゲームを弄りながら、時間を潰す。  百合亜ちゃんが寝ると妙に隣の部屋が静かになるから、その時を黙って待っていた。  ゲームの内容は全く頭に入ってなくて、何度も何度も「LOSE」が画面に表示される。  それすらどうでもよくて、ただひたすら画面をタップしていた。  時計の針が1時を刺した頃、待ちに待ったその時が訪れた。  ドキドキ、する。  ひとりでえっちなことするなんて普通の行為なのに、なんか悪いことするみたいな気分。  碧生を想像して、…それで…。  そぉっと電気の紐を引っ張って、ベッドに横たわる。  目を瞑り、頭の中にぼんやりと碧生を浮かべた。

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