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第67話
*
恋っていうのは、よく分からない。
そもそも、好きって気持ちすらよく分からなかったのだから。
例えば、かわいい女の子を見て「かわいい」と思う気持ちと何が違うんだろう。
性欲の違い?
でも、かわいいと思える女の子なら、誰でも抱ける。…と思う。
実際、そうだった。
付き合って、割とすぐにキスをして、そういう雰囲気になったらえっちをする。
ふたりきりの空間で触れ合っていたら、えっちな気分になっちゃうし、そういうものだと思ってた。
『付き合う』ってやつの一通りの流れだと思ってたし、付き合った女の子の中で抱けなかったことはない。
…じゃあ、俺は付き合ってきた女の子たちに恋をしていたの?
そうじゃない。
俺はあの子たちを嫌いじゃなかった。
それだけだ。
碧生を想う時とは、全然違う。
碧生の顔を見てるだけでドキドキするし、会話すら忘れるし、何もかも抑えるのにいっぱいいっぱいで。
一日中碧生のことばかり考えているし、会えていない時間が淋しくて、苦しくて仕方ない。
体の隅々まで碧生で侵されている気分。
これが、『本当の恋』だとして。
俺は碧生に同じように好きになってもらうために、何をすればいいんだろう。
同じ男だってことを越えてまで、好きになってもらうには…。
とりあえず、思いつくことといえば。
「碧生、おっはよー」
門の前で待っていた俺を見て、家から出て来た碧生は目を大きく丸く見開いた。
それもそのはず。
今まで俺は、遅刻ぎりぎりでしか学校へ行ったことがない。
早起きも苦手で、ホームルームごときのために5分前行動する気持ちすらわからなかった。
それに比べ、碧生の登校時間は早い。
週に2回の朝練習を抜きにしても、始業時間の30分前には家を出て、20分前には教室に居た。
前に、なんでそんな早く行くの?と聞いたら、余裕持って過ごしたい、と碧生らしい言葉が返って来た。
…わかるような、わからないような。
それでもそれが碧生の性格だと解っていたから、否定することはせず、乗ることもしなかったんだけど。
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