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第70話
「……明日からするって」
「うっかり、の話だよ」
「…」
「あっ、じゃあ夜一緒にやってくれる?」
「夜?」
「碧生の部活終わってから。うちでもいいし、碧生の家でもいいよ」
「……いいけど」
よしっ、夜もずっと一緒に居れる約束が作れた。
こんな小さなことで胸があったかくなるくらい、嬉しくなるなんて。
恋って、ほんと不思議だね。
口数の少ない碧生の横顔を見つめながら、今まで大した気にもかけなかった近所の綺麗な花の話をしたり、天気の話をしている内に、普段より30分も早く学校に着いた。
校門に立っていた風紀委員の人に驚かれ、すれ違った教師には「お前の時計が30分早いだけだったのか」と冗談交じりに笑われた。
…俺だって、恋の為なら早起きくらいしますよーってば。
ガラガラッと教室のドアを開ける。
一番乗り…と思っていた矢先、目に入ったのは一人の女の子だった。
名前は…、確か、谷崎…さん。
同じクラスだけど、ほとんど話したことのない子。
肩までの黒髪が艶々とキレイで、小さめ。
どちらかというと、地味な感じの真面目そうな女の子だ。
俺たちの姿を見て、一瞬黒目を大きく見開いた。
俺たち…じゃなくて、俺か。
「おっはよー、たにさきさん」
「…」
「…おはよう、日野君、藤井君」
「あー、俺のこと今珍しいって思ったでしょ」
ケラケラ笑いかけながら、席に座る。
谷崎さんは、正直に顔を真っ赤に染めた。
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