71 / 138

第71話

「…ごめんなさい」 「いえいえ~、もう慣れました」 「あ…、日野君」  谷崎さんが、さっさと自分の席へ座った窓際の碧生の元へパタパタと走る。    だーれもいない広い教室に、碧生と女の子が並ぶ。 「…」  え、なになに。  この二人って、話す仲なの。仲良しなの。  …知らないけど。  静かすぎる教室で、ふたりの話し声は当然はっきりと聞こえた。 「はい、昨日言ってた本」 「……有ったの」 「うんっ、苺原の本屋さんに有ったの。あんなに大きな本屋さんで探したのになぁ」 「…」 「…日野君って、後ミステリー系が好きなんだよね」 「…うん」 「ひびのもえ、って知ってる?」 「……持ってる」 「ほんとに!?」 「…貸す?」 「うんっ、読みたかったんだぁ」  …日々の萌え?  何それ、なんかのアニメ単語?  てか、この二人…モノとか貸し合う仲だったの。  そんなの、ほんと知らないよ。  ムカムカと込み上げるのは、きっとヤキモチって感情だ。  片肘をついて、楽しそうに話すふたりを眺める。  唯一救われたのは、碧生がいつも通り無表情であることだった。

ともだちにシェアしよう!