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第73話
「…毬也、どうしたの」
「…」
「喉乾いたの?お腹痛いの?」
なんで、碧生がそんな必死になってくれてるんだろう。
さっきまで、谷崎さんと話してた時はあんなに無表情だったのに。
ズキズキと鈍く痛む心は、きっと罪悪感。
…壊したいなんて、考えてごめん。
自分にこんなココロがあったなんて、ほんと知らなかった。
「なんでもないよ、碧生。ごめんね、たにさきさんと楽しそうに話してたのに」
待って、俺。
なんで、こんな嫌味なこと言ってるんだろう。
ああ、でもいいや。
取り繕う言葉とか、全然思いつかないし。
碧生はほんの少し目を丸くして、きょとんとわずかに首を傾げた。
「…別に」
「たにさきさんと仲良かったんだね、知らなかった」
「仲良い…訳じゃない。部活が一緒」
…え、谷崎さんって吹奏楽部だったの。
……それは、話すよね。…仲良くもなるよね。
最低だ、俺。
恥ずかしい。
余裕が無さ過ぎて、気持ち悪いよ。
「そっか」
と言いつつ、一瞬で身体中に広がった気まずさで顔ごと目を逸らす。
途端、端目に映った碧生が不安げに瞳を揺らした。
あーもう、なんでそんな顔するの。
まじで、襲っちゃいそう。
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