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第74話
「…毬也、嫌だったの」
碧生が、ぽつりと言葉を落とす。
「ん?」
「あの子と話すの…嫌だったの?」
「…んー、…うん。嫌だった」
「…」
「すっごい嫌だった」
碧生の表情が、更に不安げなものに変わる。
なんでこんなにかわいいんだよ、碧生。
「ははっ」と誤魔化すように笑って、碧生の頭を撫でた。
「って、嘘だよ。なんて顔してんの」
「…ない」
「ん?」
「もうあの子と話さない」
『毬也から離れたくない』
そう言ってくれた時の顔と、同じ顔で碧生は言った。
…碧生。
あぁ、そっか。
碧生は、俺がまた傍からいなくなることが本当に嫌なんだね。
幼馴染として。
俺とは違う。
全然違う。
うん、それは解ってる。
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