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第75話
常にそんな不安を抱えて、今でも拭えないでいるのか。
あんなに伝えたのに。伝えてくれてるのに。
そんなに強く大きな傷を、中学の俺は碧生に残しちゃったんだね。
…でも、その不安をどう掻き消してあげていいのかわかんないんだ。
むしろ、その不安を利用したいとまで、考えちゃってる。
恋するって、ちょっとこわい。
自分が自分でなくなっていくよう。
「嘘だって。…話していいよ、碧生」
「…」
「碧生は俺のことが大切だもんね?」
「うん」
「なら、いいよ。ってゆーか、俺が許可するのもおかしいよね」
あははっと笑ってみせたけど、碧生は不安げな表情を崩さなかった。
あぁ、もう。
そんな顔されたら。
「ね、碧生」
「…なに」
「碧生はさ、俺に気を遣わずに話したい人と話したらいいよ」
「……」
「その代わり」
「…」
「ちょっと抱き締めていい?」
「…え」
「いい?」
こんなの、碧生が喜ぶことじゃない。
男同士で気持ち悪いと思われるかもしれない。
でも、碧生は絶対に断らない。
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