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第79話

 なんて答えていいのか解らないから黙っていると、碧生は続けた。 「…なんか、あったの?毬也」 「…」 「…嫌なこととかあったの」 「……」 「……悩み、あるの」 「…」 「……毬也」 「ん」 「………好きな人、出来たの」 「…っ」  想定外の言葉に、駆け巡った動揺が握っていたシャープペンの存在を忘れた。  カチャッと小さな音を立てて床へ落ち、フローリングにそってコロコロ転がる。  碧生の膝にぶつかって、その動きを止めた。  思わず顔を上げると、真剣な表情の碧生と視線がぶつかった。  …気付いた?  もしかして、気付いてたの、碧生。  …確かに、分かりやす過ぎる態度だったけど、碧生は恋愛に関しては経験無さそうだから絶対に気付かれないと思ってた。  ドキドキと、痛いくらい心臓が速まる。  …落ち着け、俺。落ち着いて。  どうか、変な顔してませんように。 「ど、どうしたの、急に」 「…毬也は、中学の頃からあまり変わってない」 「…」 「毬也は、わかりやすい」 「……」

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