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第80話

 そりゃあ、そうだよね。  気付くよね、普通。  こ、告白していいってことかな。  突然のお膳立てに、準備不十分な心がワタワタと焦り始める。  ええっと、告白ってどうするんだっけ。    「好きです、付き合ってください」  「まりのこと好きになっちゃった。付き合おうっか」  「ねぇ、キスしよ。で、わたしと付き合ってよ」  「まり、好き。試しにわたしと付き合ってみない?」  ねぇっ誰か、どれが正解なの!?  どれを言ったら、碧生が頷いてくれるの?  ううん、頷いてくれなくてもいい。  前向きに考えてくれるの?  わかんない。  わかんないよ…。  頭の中の大騒ぎを余所に、外側は冷静を装って、碧生から目線を離さなかった。  碧生はゆっくりと瞬きをしながら、続ける。 「…毬也はいつもは何も考えて無さそうに笑ってるけど、そうなると一人で考え込むことが多い」 「…そう、だったかもね」 「……好きな人、出来たの」  ドキドキ、ドキドキ。  うーんっ、五月蠅いよ心臓。少しは治まって。  碧生の声が、ちゃんと聞こえない。  一度大きく息を吐き出して、すっかり乾いている唇を舐めた。 「…すきなひと、出来たよ」  言った。言っちゃったよ。  で、次は何を言わなきゃいけないんだっけ。  何もかも初めてで、どうしていいのか、頭がうまく回らない。

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