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第81話

 碧生は俺の言葉に、「そう」と小さく頷いて、大きな黒目を俺の顔からテーブルへ落とした。  俺が「おれ、」と声を発したと同時に、碧生が口を開く。 「…俺、大丈夫だから」 「え」 「…大丈夫だから」  大丈夫って、何。  男同士でも大丈夫ってこと!?  毬也の気持ちに応えれるよってこと!!?  碧生からの次の言葉を待って、言葉と唾を飲み込んだ。 「…毬也は毬也の好きにしていい」 「……、…好きにしていいって?」 「毬也は、自分の気持ちに正直でいた方がいい」 「…碧生、…その、それって」 「俺は…、毬也の時間が有る時だけで良いから」  …ん?  あれ、どういうこと? 「毬也の時間有る時に、こうやって一緒に居るだけでいい」 「……」  えっと。  それって、もしかして…、 「毬也はそのひととちゃんと付き合って。大切にしてあげて」  碧生は強い眼差しで、はっきりとそう言い放った。  あー、…やっぱり。  なんで、勘違いしてるの碧生。  俺の好きな人なんて、どう考えても碧生しかいないじゃん。  不器用過ぎる俺の行動。礼二がいち早く気付く程だったのに。  …どうして、肝心の本人は気付いてないの。  俺に、他に好きな人がいるって?  どうしたら、そんな風に考えることが出来るの。  『毬也はそのひととちゃんと付き合って。大切にしてあげて』  …そんなの、碧生から言われたくない。  何も知らないとはいえ、一番残酷で辛い言葉だよ。

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