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第87話
また、俺は後先考えずに、…いや、何も考えずに言葉を吐き出してしまった。
しかも、思考の中心に無かったはずの言葉。
…思考の片隅に有ったのかな。
そういえば、いつだったかな。
碧生は百合亜ちゃんの話をすると少し気持ちが落ち込んだように見えたっけ。
…そういう、ことなのかな。
「…百合亜のこと?」
「うん」
ふぅ…と、碧生は小さな息を吐き出した。
そして、ほんの少しだけ困ったように微笑む。
「好き」
「…」
ずきり。
心臓が、一瞬動きを止めた。
碧生の口は、更に動かされる。
「幼馴染として」
嘘吐き。
そんな顔じゃないじゃん。
…俺だって、少しの間だけど…碧生のことだけずぅっと見てたんだよ。
碧生の表情の変化も、ぜーんぶずっと見てたんだよ。
……分からないはず、ないじゃん。
いくら、俺が鈍感だとしても…分かるよ。
「…恋愛じゃないの」
「……」
碧生は、何も答えなかった。
俺も、それ以上は何も聞けなかった。
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