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第93話
「…百合亜は正直に話さない、か」
「うん。…多分聞いても逸らされるか怒られるかだと思う」
「だよなぁ」
礼二は眼鏡を片手で外して、苦笑した。
俺も「ね?」と微笑みを返す。
「…礼二、俺、どうしたらいいのかな」
「お前は、どうしたいんだ」
「どうしたいって、そりゃあ…碧生を自分だけのものにしたいよ」
「…」
俺の言葉に、礼二の顔がほんの少し歪んだ。
その理由は、分からない。
多分、俺が変なことを言ったのだろう。
でも、そこを問う余裕はなかった。
見て見ぬふりをして、続ける。
「…ね、礼二」
「ん」
「好きってなんなのかな」
「…」
「俺ね、今まで自分のことを好きになってもらうってこと…考えたことなかったんだ」
「…あぁ」
「気が付いたら誰かに好きだって言って貰えてたから…、どうやって好きになってもらうのかなんて全然わかんない」
「…」
「碧生の喜ぶこと…って考えてるのに、全然うまくいかない」
「…そうか」
「恋愛って、なんなのかな。…付き合うって一緒に居ることだと思ってたんだけど、…違うんだね」
「そうだな」
「…俺は碧生を好きだけど、…碧生が百合亜ちゃんを好きなら正直しんどい。実る気がしない」
「…」
「こんな恋、辛いだけだよ」
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