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第95話
「まりらしいといえばらしいが、…それじゃあ本気かどうかは伝わらないな」
「……本気だよ」
「本気ならぶつかってみればいいんじゃないか。それで砕けたなら仕方ないだろう」
「…砕けたくない時はどうしたらいいの」
「さぁ?お前に告白してた女の子たちは、多分みんなそんな気持ちだったんだろうな」
「…」
『今まで女の子の本気を弄んできたんだから、少しは本気の辛さを味わうがいいわ』
百合亜ちゃんの台詞が、今更心の中に重たく響く。
「どうせ、碧生君が離れて行ってしまうのが怖いとか、幼馴染って関係が崩れたら怖いとか、思ってるんだろ?」
「…当然でしょ、…碧生のこと大事だし。ずっと傍に居たいし」
「それなら、一生告白するな。その恋心消してしまえ」
「…っ」
「今のお前はどっちつかずだから、そんな態度になるんだ。はっきり言って、碧生君が可哀相だ」
「…」
「何も知らずに、毬也に振り回されてる。碧生君が毬也に大きな信頼を置いてるだけに、見てるだけでも痛々しい」
「…それは、」
「お前は今、自分しか見えてない。碧生君を好きな自分しか」
「…」
「好きならぶつかれ。怖いなら忘れろ。俺はそのくらいしか言えないな」
「……」
礼二の表情はとても柔らかかったけど、声は真剣で鳥肌が立ちそうなほど低かった。
……そんなの、言われなくても分かってる。
分かってるけど…。
心の天秤が、どちらにも傾けない。
怯えてる。
でも、それだって、ただの言い訳だ。
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