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第102話

 優樹菜ちゃんとのデートみたいな放課後は、昔と同じような時間の過ぎ方だった。  早いけど、遅い。充実してるんだけど、何か物足りない感じ。  映画見て、カフェでご飯を食べて、カラオケに行く。  ごくごく普通のデートコース。  にぎやかな街、可愛らしい建物が並ぶ大通り。  お店のウィンドーに映る俺と優樹菜ちゃんの姿は、どっからどう見ても『普通の高校生カップル』だ。  女の子と歩くおとこのこの俺。  これが普通なんだよね。  でも、俺はやっぱり碧生と肩を並べて歩きたい。  手を繋いで、歩きたい。  思えば、碧生と二人でどっかへ行った事って無いな。  買い物とか、映画とか、…みんなで行ったカラオケ以外大通りに出たことさえない。  もっと、いろんなとこへ行けば良かった。  もっと…、ずっと一緒に居たい。  …碧生、もう部活終わったかな。  一人で、…前みたく一人で帰ったのかな。  少しは、俺のこと思い出したりしてくれたかな。  碧生に会いたい。  無意識に、何かをするたびに碧生ならこうするかなとか、目に映るものに碧生と重ねたり。  結局、忘れる…ううん、紛らわすために女の子とデートしたのに、心の中から碧生が一瞬でも消えることはなくて。  離れている分だけ、余計に大きくなっていくから、少し怖くなった。 「まり君、送ってくれてありがとう」  何度か来たことがある、優樹菜ちゃんの家の前。  優樹菜ちゃんが満面の笑みを浮かべて、言った。 「うん、また明日ね」  俺は、変わらず偽物の愛想笑いを浮かべる。 「楽しかった。ありがとう」 「ん、俺も」 「…少しは、紛れた、かな?」 「うん」

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