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第103話

 優樹菜ちゃんが俺の顔をじぃっと見つめたから、なんとなく気まずくなって目を逸らした。  碧生も優樹菜ちゃんも何か言いたいことがあるのに、言わないで窺うように見つめるのはずるい。  …碧生の言いたいことはいつもよく分からないけど、優樹菜ちゃんの言いたいことは分かる。  ごめんね、優樹菜ちゃん。  やっぱり俺は、碧生がすっごく好きなんだ。 「じゃあ、帰るね。おやすみ」 「…あ、まり君」 「ん?」 「まっ、…また誘っても、いいかな…」 「…」  俺は優しく微笑んで、首を横に振った。  誰かで、碧生を忘れるなんて無理。  絶対無理。  これ以上、優樹菜ちゃんを利用するのは本当に申し訳ない。  それに…、こんなことは自分を好いてくれる人に悪いことをした、と改めて実感した。  「…そっか」と、優樹菜ちゃんは淋しそうに微笑む。 「ごめんね、優樹菜ちゃん」 「ううん、謝らないで。…まり君、その人のこと本当に好きなんだね」 「…うん」 「今日もずっとその人のこと考えてたでしょ、上の空だったもん」 「…ごめん」 「でも、私、ずっとまり君のこと考えてるから」 「…」 「…辛い時は、いつでも頼ってね」  優樹菜ちゃんの声は消えかかっていったから、最後の方はほとんど聞こえなかった。  こういう時、「うん」って言った方がいいのかな。  「俺のこと好きだって言ってくれるなら、それは出来ない」ってはっきり断るべきなのかな。  …わかんないや。  恋って本当にわからないことばかりだね。  想うのも、想われるのも。

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