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第105話

「…っ」  心の中で、何かが割れる音がした。  小さな破片と大きな破片。  どちらも身体中を巡って、きりきりと痛みを与えて行く。  碧生はおずおずと俺の方へ近付いた。 「……まり、や」 「……」  なんで、そんな怯えたような顔で見るの。  なんで、そんな窺う様な顔で…。  いつも通りの、碧生の表情だったはず。  それでも胸が苦しくて、何も考えられない。  碧生がうちに来ていたのは、百合亜ちゃんと一緒に居るため。  …俺は、離れている間もずぅっと碧生のこと考えてたんだよ。  碧生は…、やっぱり違うんだね。  一瞬でも気を抜いたら、泣いてしまいそうだ。 「…毬也、…前に付き合ってた女の人と遊んでたの」 「…は?なんでそれを」 「……部活の人が…、その子と同じクラスで…」  ほんと、女の子って口が軽すぎだよ。  でも、碧生がそれを咎める資格はない。  俺がひとりで後ろめたい気持ちに襲われるだけでしょ。  何も答えずに碧生の肩のあたりを見つめていると、一度大きな息を吐き出した。  緊張しているのだろうか、なんとなく震えている気さえする。 「…これからも、…また…その子と遊ぶの」 「…」 「…毬也、その……子の顔、好みなんだよね」  だから、何だっていうの。  俺が好きなのは、碧生なんだけど。  それに、碧生の好きな人は横に居る俺のお姉ちゃんなんでしょ。  碧生には…、何も関係ないよね。

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