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第109話
胸が苦しくて、痛い。
ズキズキと刺さるような痛みは、馬鹿な自分を苛む。
「…百合亜ちゃん、…俺」
「何も聞きたくない。っとに最低、二度と私の前でしゃべらないで」
「…」
「バカだと思ってたけど、本当に…本当に馬鹿だったのね」
「……」
「あんたには失望したわ」
吐き捨てるように言い放ち、百合亜ちゃんが自室のドアノブに触れた瞬間。
碧生が「百合亜」と呼び止めた。
百合亜ちゃんは俯いたまま「なに」と強めの口調で応える。
「毬也は、悪くない」
碧生は柔らかく微笑んで、はっきりとそう言った。
…碧生?
俺は何も言えず立ち尽くしたまま、そんな碧生の横顔を見つめる。
「毬也に謝って」
「……嫌。私だって悪くないもの」
「うん、百合亜も悪くない。でも、毬也にひどいこと言った」
「ひどいことって…」
百合亜ちゃんが弱々しい顔を上げ、碧生の顔を見据えた。
碧生は、にっこりと優しく微笑む。
「……私は、碧生の…」
「ううん、違う。そんなのは嬉しくない」
「…」
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