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第111話

 本能的に反応した身体だけが、動く。  碧生の元へ駆け寄って、小さな背中を抱き締めた。  そう気が付いたのは、布越しにうっすら感じる体温を認識してから。  碧生の身体は硬直していたけど、腕から伝わる心音は徐々に速まって行く。  その振動が、妙に安心出来た。  また、碧生を抱き締めてしまった。  でも、もう後悔なんて。 「……ま、…まりや」  碧生の掠れた声が、耳を通り過ぎる。  心臓が、どきんっと小さく跳ねた。 「…毬也、」 「……碧生、ごめんね」 「え」 「…全部嘘」 「…毬也…?」 「疲れたとか誰かと遊びたいとか、全部嘘」 「…え」 「ごめん」  碧生の肩に顔を埋めて、情けなく震えてしまった声を必死に振り絞った。  ごめんね、碧生。  二回も傷付けて、ごめん。  俺の自分勝手でいっぱい振り回して、ごめん。  泣かせてしまって、本当にごめん。  ちゃんと、本当のこと伝えるから。  告白とか…意識しちゃったら、やっぱり緊張するしすごくこわいけど。  もうこれ以上碧生を傷付けたくないから、全部…伝えるね。 「碧生、こっち来て」  碧生の腕を掴み、なかば強引に俺の部屋へ引っ張って行く。  碧生は何が起きているのか理解出来ないかのように目を見開いていたけど、抵抗することなく引かれるまま中へ入った。

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