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第112話
ぱたんとドアを閉めて、碧生と向き合う。
乾いていない涙の筋を見て、ずきりと胸が痛んだ。
…ほんと、ごめんね碧生。
ふぅ…と小さく息を吐き出して、じぃっと碧生の顔を見つめる。
碧生は下唇を軽く噛み、これから吐き出されるであろう予測不能の言葉に対して、覚悟を決めているようだった。
もう一度、深呼吸。
一瞬で喉も唇もカラカラだ。
心臓は今まで味わったことがないほど、速い。
手は汗ばんでいるのに、指先がひんやりと冷たくなっている。
大丈夫、…きっと大丈夫。
碧生は受け止めてくれる。
「…碧生」
「……うん」
「実はね、…俺ね、…ずっと碧生に言わなきゃいけないことがあったんだ」
「……、…うん」
「……俺、…」
「…」
「……碧生を好きになっちゃった」
「え」
「…好きに…なっちゃったんだ」
碧生の大きな目が更に見開かれて、ぽかんとほんの少し開かれた口は音無きままわずかに動かされる。
瞬きすら忘れ、碧生の全部から動きが止められた。
お、驚いてるよね、碧生。
そりゃ驚くよね。
幼馴染の同じ男が、自分のことを好き…だなんて。
慌てて、言い訳をするかのように、俺は口を開く。
「い、いきなりごめん、碧生…でも本当に少し前から碧生のことが好きで」
「…」
「そのっ、…だから…多分、ずっと態度がおかしくなっちゃってて」
「…」
「親密な空気だった碧生と百合亜ちゃんとの関係にもやきもちやいちゃって」
「……」
「ひどいこと言って本当にごめんっっ」
「…」
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