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第119話
「…本気、なの」
碧生の声は、少し震えている。
「うん、本気」
「……俺、女の子じゃない」
「知ってるよ」
「…毬也は、女の子が好き」
「前まではね」
「……」
「…」
碧生は、更に俯いてしまった。
困ってるのかな、そうだよね。
離れたくない、と伝えた相手が、実は自分のことが好きだったとか。
まるで、『俺も同じ気持ち』って言ってるようなものだよね。
でも、碧生。
俺はちゃんと解ってるから。
碧生の本心解ってるから、早く言って。
『好きな人がいる』
って、俺にも伝えてよ。
「…碧生は…、男同士なんて気持ち悪いよね」
碧生の顔が上がるよう、「はははっ」と笑ってみせるけど、碧生の頭は動かなかった。
その代わり、ふるふると首を横に振ってくれた。
「…気持ち悪くない?」
「……きもちわるくない」
「そっか、ありがとう」
「…」
「碧生にそう言って貰えるなら、それだけでなんか幸せだよ」
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