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第120話
しばらく、静寂の時間が過ぎていた。
ドキドキと身体中に響く心臓の音と、小さな秒針の音だけ。
碧生は、今何を考えてるのかな。
俺を傷付けないように。
恋愛相手ではなくても、俺が離れないように。
あぁ、もう。
じれったいというか、待ちきれないというか。
ただ次の台詞を待ってるだけじゃダメなのかも。
「…」
深く考えないのは、いつもの俺で。
俺は、もしかしたらこのままでいいのかもしれない。
だから。
「ね、碧生」
「……うん」
「碧生は、…好きな人がいるんだよね?」
「…なんで」
「ごめん、百合亜ちゃんからさっき聞いた」
「……そう」
「でね、もしその人と付き合ったりしてないんだったら、俺と付き合ってみてよ」
「……」
「男が嫌じゃなければ…だけど」
ねっ、と碧生の顔を覗き込む。
碧生の顔は、予想に反して真っ赤に染まっていた。
「…碧生」
「……付き合うって何」
「え」
「付き合うって何をするの。…付き合ったことないから、わからない」
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