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第122話

 碧生は、小さな粒をぽとりぽとり落としていくように言葉を連ねた。  その言葉は、耳を通り過ぎて心の中へ甘くあったかく響く。  ねぇ、碧生。  もしかして…、碧生は煽ってるんじゃなくて。  もしかして、…もしかして。 「…碧生、俺のこと好きだったの」 「…っ」  俺のセリフに過剰反応した碧生は、多分碧生の全ての力を振り絞って俺を引き離そうと肩を押す。  運動神経抜群な碧生だけど、当然力は俺の方が勝っているからびくとも動くことはない。  頑張っている碧生の様子を微笑ましく見守っていると、しばらくして諦めてくれた。  その腕は、おずおずと俺の首に回される。  …初めて、碧生が返してくれた。    それだけで、涙が込み上げて来るから困っちゃうなぁ。  「…碧生」 「………だった」 「ん?」 「………ずっと、好き、…だった」 「ほっっ、ほんとうに!?」 「………」  小さく頷いた碧生は、一瞬で吃驚するほど真っ赤に染めた顔を隠すように俺の肩へ顔を押し付ける。  う、わぁっ、碧生の顔が、顔が…すぐそこ…、熱い…っ。  じゃなくて。  あおいが、おれのことをすき…?  えっ、でもずっと好きな人がいるって。  えぇっ、…それが俺…?  てっきり女の子のことかと思っていたのに。  うそ、えっ、本当に…!?  幻聴じゃないよね。俺の妄想じゃないよね。  今、本当にそう言ってくれたよね。

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