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第124話

 そぉっと身体を引き離し、腕の長さ分の距離で碧生と向き合った。  自然と浮かび上がった満面の笑みで、碧生に微笑みかける。 「…碧生、改めてもう一回言わせて」 「……うん」 「碧生が好き。すっごく好き。…だから俺の恋人になってください」  碧生の目は、熱と感情で潤んでいた。  身体も、未だに小さく震えている。  下唇を噛んで、わずかに目線を落とす。  眉間に皺を寄せ涙を零さないように堪えながら、ゆっくりと俺の顔へ視線が戻されて。   唇が動かされた。 「…………はい」 「ありがとう、碧生」   「…毬也にお礼を言われることじゃない」 「ううん、嬉しい。今までの人生で一番うれしい」 「……17年も生きてるのに」 「まだ16年だけどね」 「…」 「あーでもこれからもっとうれしいことでいっぱいになるんだね」 「え?」 「だって、ずぅっと一緒に居れるんだよ。いーっぱい嬉しくて幸せなことが増えてくに決まってるじゃん」 「……そうだね」 「ね、碧生。もういっこ、うれしいことお願いしてもいい?」 「…なに」 「キスさせて」 「……したことない」 「大丈夫、俺が教えるから。碧生はただ目を瞑ってるだけでいいよ」 「……こう?」

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