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第126話
「……一生、言わないと誓ってた」
唇を離した途端、顔から湯気が出そうなほどショート寸前の碧生はぱたりと俺の胸元へ頭を預けた。
ぽつりと、切なげな声で呟く。
「…ん?」
「……毬也を好きだと気付いたのは、中学一年の春」
中学一年の春。
間違いなく、あの出来事のせいだと気が付いた。
いや、『せい』じゃなくて…『おかげ』かな。
とても、自分勝手だけれど。
「毬也に彼女が出来て、一緒に帰らなくなった」
「…うん」
「……ずっと一緒に居れると思ってた。それまでは」
「…」
「でも違うんだって初めて知った。…毬也は毬也の人生が有って、俺はたまたま近くにいただけで」
「…碧生」
「たまたま幼馴染で…、ずっと隣に居れるわけじゃないんだって……気が付いた」
碧生は、振り返りたくない中学の自分を思い出すかのよう奥の方から絞り出して告白する。
その声がとても辛そうで、ずきりずきりと胸が痛んだ。
中学の馬鹿な自分。
俺だって振り返りたくないけど、ちゃんと向き合わなきゃ。
碧生の全部を受け止めて、もっともっと大好きになるんだ。
「……幼馴染だけど…同じ男のことが好きだなんて、毬也には絶対に知られたくなかった」
「…」
「…きっと丁度良かったんだと思う。…近くに居なければ……ばれないから」
「……碧生」
「だから…本当は……こわかった。毬也と同じクラスになって、…また傍に居ることになって」
「…」
「…いつ気が付かれてしまうんだろう、…本当に毬也が離れてしまう……幼馴染に戻れなくなる」
「……」
「……すごく、こわかった」
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