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第128話
*
次の日。
あえて百合亜ちゃんの登校時間に合わせて一緒に家を出て、碧生と付き合うことになったことを告げた。
本当は碧生が言いたいと言ってくれたんだけど、譲ってくれるよう頭を下げた。
百合亜ちゃんに直接言うことで、今まで俺がしてきてしまったバカな行為にけじめをつける。
自分勝手な我儘。
それでも、俺には必要なこと。
百合亜ちゃんは、「良かったわね」と微笑んだ。
「…いいの?」
ぽろっと出してしまった本音に、キッと俺を睨み付け、すねを蹴られた。
硬いローファーのかかとが思いっきり入って、思わず「いてぇえっ」と朝日に似合わない声を上げる。
散歩中の犬と飼い主に振り返られたけど、笑顔を振りまく余裕すらなかった。
「なにするの、百合亜ちゃん」
「あんたって本当に馬鹿ね」
「…」
「こういう時、そういう台詞は絶対に言っちゃ駄目。そんなこともわからないの」
「…ごめんなさい」
「碧生の気持ちなんてずぅっと前から知ってたもの。当然の結果だわ」
「そっか」
「毬也」
「ん」
「3回も同じこと、するんじゃないわよ」
「うん」
「今度碧生を泣かせたら、一生許さないから」
「もちろん、わかってる。大丈夫、絶対泣かさない」
「どうだか。あんたは馬鹿だから信じられないわ」
「ひどいなぁ」
「ま、今回は倒れた碧生に免じて信じてあげる」
「…ありがとう」
にっこり笑った百合亜ちゃんは、弟の欲目を抜きにしてもすごく可愛かった。
思わず、二度見しちゃうくらい。
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