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第132話
「碧生のこと狙ってる子とか要らないし!そういうの止めてよ」
「ちょ…、お前なぁ、ひのっちだって選ぶ権利くらいあるじゃん!ひのっちがモテるからってやきもちやいてんじゃねーよぅ」
「やきもちじゃないし」
「ひのっちがモテようが彼女が出来ようが、幼馴染のまりには関係ないだろ!」
「関係ある」
「ねーよ」
「ある!」
机を両手で叩き、勢いよく立ち上がってしまった。
ごめん、碧生。
余裕のない彼氏で、ほんとごめん。
「俺は、碧生の恋人だもん!!」
叫び声にも似た宣言は、教室全体に響き渡ってしまった。
しまった…と気が付いた時には、時すでに遅し。
碧生もヤスも礼二も女の子達も、みんな同じような顔で目を見開き、俺を見つめている。
教室に居たクラスメイト全員、更にはたまたま廊下を通りかかった違うクラスのひとたちまで。
…先生も何人か、含まれてた。
さぁあっと頭上から冷水をかけられたかのよう青ざめていく。
…やばい。
内緒にしてって言われたばかりだったのに。
仲間内どころか、…クラス全体……下手したら明日には学校中に…。
ぴたりと凍り付いた教室で、一番最初に聞こえたものは動揺で上ずったヤスの声だった。
それを合図に、みんなの時計が動き出す。
「お、お前…、何言ってんの」
「…えっえっと…、えっとねぇ」
どどどど、どうしよう。
否定した方がいいのかな、…いやでも、嘘は吐きたくない。
笑って誤魔化す…ような雰囲気ではないし。
あぁあっ、ごめん碧生。
こわすぎて、碧生のほうは向けないのだけれど。
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