135 / 138

第135話

 日付が変わる2時間前。  まるでお酒でも飲んだようなテンションのまま、ヤス達と解散した。  当然、俺と碧生は同じ道を帰る。  火照った身体に優しく吹き付ける夏風が涼しくて気持ちいい。  二の腕あたりにある碧生の顔は、恥ずかしそうにちょっとだけ俯き加減だった。  そぉっと指を絡めると、慌てて顔を上げる。 「まっ、まりや…」 「なぁに?」 「…こ、…ここ、公道だし…」 「うん」 「……ひとに見られる」 「うん?そうだね」 「……毬也は…嫌じゃないの」 「嫌?なんで?碧生と手を繋いで帰れるなんて嬉しすぎるよ」 「……」  碧生は何故かきゅっと下唇を噛んで、照れ隠しなのか俺を軽く睨み付ける。  月明かりにぽやっと照らされた碧生の顔は、真っ赤に染まっていた。 「…毬也にはかなわない」 「ん?俺は碧生にはかなわないよ」 「…何が」 「何がって全部。だって俺、碧生が望むことはぜーんぶかなえてあげたいし、これから先俺の人生は碧生中心で回ってくんだもん」 「……やっぱり、毬也にはかなわない」 「ん、なに?聞こえなかった」 「なんでもない」  碧生は拗ねるかのようにぷいっと目を逸らしたが、絡めた指に力を込めてくれた。  …ほんと、かわいいよ碧生。  あぁ、もう…抑えきれない。  でも、もう我慢しなくていいんだよね。

ともだちにシェアしよう!