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第4話→sideH
回された役割連携からの配置を見ても、俺の役割が1番危険な位置で、捕まったとしてもトカゲの尻尾切りのようにあっさり捨駒にされるのは明らかだった。
そんなに頭の良くない俺にさえ見え見えの算段すぎて、わざわざそれに文句をつける気にもなれない。
「不満なのか?」
割符を手にしてから、口をつぐんだままの俺の態度に松川さんは顔を覗きこんでくる。
「そりゃあ、まあ、1番アブネェ橋を渡るのは俺みたいすからね」
「誰だって、最初は下っ端だからなァ。割に合わない仕事が来るのは仕方ねーだろ。社会の上下関係ってねのは、そんなもんだぜ」
諭す様な口調でニヤニヤしながら俺を見下ろしてくる。
だいたい、松川さんは俺の1年の時の3年ではあったが、トップとはほど遠い人で、トップだった人のこばんざめみたいな感じの人だった。
たまたま、ライの家でやることもなくウダウダしていた時に出くわし、仕事の紹介をしてくれるとなり、居候もさせて貰っているのだ。
「そうかもしれねーっすけど、ちょっとタイミング間違えたら俺だけ捕まるじゃねーですか」
松川さんに差し出されたタバコに手を伸ばして1本くわえる。
人を利用したことはあっても、何故か今までされたことはない。
高1の時でさえ、周りの仲間がなんやかややってくれた。
何故か。
ライがうまくやってくれたからだ。
危ない橋も汚いことも、まとめて引き受けてたからだ。
そんなこた、俺でも分かってはいる。
「大丈夫だって、そんなに警察は平日に配備されてねーし。大体、今はテロやなんやの方がひでえんだから、こんなささいな仕事にゃ関わってこねーよ。オマエくらいのヤリ手ならなんとか撒けるだろ」
訳の分からない自信と裏付けに、俺は眉を寄せて松川さんを見返した。
多分松川さんくらいなら、俺だけでも倒すのにお釣りがくるくらいだろう。
だけど、ほかの4人はなんだか雰囲気が不気味な感じがする。
ここで抜けると言ったら、口封じされかねない。
今このタイミングで、この話から逃げる算段がどうしてもたたない。
1対5とか、別に大した話でもないし昔は余裕だと思えたんだが、松川さん以外の奴らの力量がまったくはかれない。
「なんだ、ビビってんのか?」
やっぱりコイツは挑発口調だ。
この仕事で、コイツと関わるのは最後にするしかねーかな。
金が手に入ったら、さっさと住むとこ探さないとな。
「わかりましたって。そんなに念を押されたら、何かあんのかって逆に警戒するッてもんですよ」
薄い笑いを張りつかせて、俺は心の中でこの仕事の後の逃げる算段を考え始めた。
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