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第5話→sideRT
ハルカが部屋から居なくなってから、1ヶ月半経っていたが、一向に俺には情報は入ってこなかった。
携帯はしっかり解約されてるし、連絡のとりようもない。一方的にあっけなく終わりにされた。
ハルカとの関係は、もう十数年で幼稚園の時に出会って物心つかない間に仲良くなって、気がついたら一緒にいることが空気みたいに当たり前になっていた。
それが嘘みたいにあっけなく、ヤツは俺の前から姿を消した。
そんなに、俺はハルカにとってどうでもいい存在だったのか。
今までハルちゃんと呼んでたのに、高校に入ってすぐに好きな奴がハルちゃんと呼ぶから、同じ呼び方するなと言われた時もショックだったが、いまは殆ど虚無の状態になるくらいショックを受けている。
「今日も探しにいくんか?峰さァ、ちゃんと寝てんのかよ?顔色すげえひでえよ」
ダチの浜田が車で迎えにきてくれたので、俺は助手席に座るとカバンを後部座席に投げた。
「ワリイ。N市の駅前で客引きしてんの見たって奴がいたからさァ。キャハ、これでも営業だしなァ。目の下にコンシラー塗りまくりだぜ」
俺にくる情報は核心がないものばかりだが、ハルカが俺を避ける理由なんて、どう考えてもヤバイ仕事に足を突っ込んだからに違いないのだ。
単純明快すぎる思考回路しかないから、すぐにわかるっていうのに。
「いくら若いっても、オマエ倒れンぜ。小倉サンだって、ガキじゃねーんだしよ。自分の始末くらい、自分でつけれんだろ」
「キャハ、ハマはハルカを知らなすぎ。アイツはホントにアタマわりーから。だから、1人にさせたらやべーんだよ」
いつだって、挑発に乗らせないようにうまく誘導してきた。社会人になっても、ずっとそれを続けるつもりだった。
おかしい。
こんなに探してんのに、見つからないとか、絶対にありえない。
「峰は、過保護過ぎだって。そういやあ、N市っていやあ、俺らの2つ上の先輩で、ヤクザになったって人がいたよな」
ハマの言葉にぞわぞわっと嫌な悪寒が這い上がってくる。
「そんなヤベーやついんのかよ?」
「強くもねーのに、かなりイキってた人いたじゃん。五十嵐さんの取り巻きで。まあ、ちっさい事務所らしいけどさ」
浜田の言葉に俺はどこかで焦りを感じていた。
ハルカを好きだと思ったのは、いつだったか。
物心ついたくらいで、ガキすぎて覚えてはいない。
ハルカが殴られるくらいなら、俺が変わりに殴られた方がいい。そんな風に思うようになっていった。
たった1ヶ月半、合わないだけで俺は抜け殻だ。
「ハマ。もしよ、ハルカがヤクザになるっつたら、俺もついていくくらいの覚悟はあったんだ。だけど、それでもさ、真っ当に生きて欲しくてよ、裏の仕事したら縁切るっつちまった」
だから、置いていかれた。
縁を切られたのは、俺の方だった。
「峰、小倉サンはつええ人なんだから、そんなに心配しねーでもいいんじゃねーか?オマエさあ、執着しすぎでおかしいぞ」
「キャハ、そうかなァ。そうだな、キャハハ、俺、マジおかしいわ」
そんなの、昔からだ。
ハルカに関することになると、俺は、オカシクなる。
「とりあえず、俺も先輩とかにあたりつけてみっから。オマエも、遅くならねーうちに帰るんだぞ」
ハマは車から俺を降ろすと、念を押すように俺に告げて、車で立ち去った。
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