彫りが深く日本人離れした顔だけど、人懐こい笑顔をする誰にでも好かれる男が、俺はかなり苦手だった。 名前は真壁士龍。将兵の一派のアタマだった男だが、留年しているので、まだ高校生だ。 苦手な理由は一つしかない。ハルカがこいつのことを好きだったからだ。 ｢あ、五十嵐さん。コンバンハっす｣ 軽く頭を下げて、何を思ったのか俺と将兵の間の席に割り込むように入ってくる。 ｢つか、真壁。オマエ、なんで制服なんだよ｣ ｢予備校帰りなんで、着替える暇なかったンで｣ 五十嵐さんのツッコミに笑いながら意外すぎる答えをする。 ｢ヨビコー！｣ なんかツボに入ったのか、五十嵐さんは爆笑している。 士龍はひょいと顔を俺の方に向けて、マジマジと俺の格好を眺めて吹き出す。 ｢それにしても、峰ちんのスーツ似合ってねーなァ｣ 卒業前の抗争で、ハルカと俺はこいつのことを輪姦したのだが、覚えてねーのか。 いや、そんな筈はねーよな。 将兵の言う通り、そういう記憶力はねーだけの話だろう。 ｢おヒサ。イヤイヤ、士龍ちゃんの予備校よりは似合ってるだろーよ｣ 早速断りもなく、士龍は俺の皿からステーキを攫って口に運ぶ。 ｢士龍。来て早々わりーんだけど、峰の相談乗ってやってくれねーかな｣ 将兵は、士龍の皿に自分の肉を乗せて、野菜も取り分けながら問いかける。 こいつの一派の奴は普段はあれやこれやと士龍に世話を焼くのが好きなんだったな。 チラと士龍は肉を頬張りながら、 ｢ん？あーングング？｣ 何を言っているのか謎である。 ｢真壁、ちゃんと食ってからモノを言え｣ 微笑ましそうな顔をする五十嵐さんも、まあ、レアなのかもしれない。 士龍は1年の時はどこの一派にも入っていなくて、でも五十嵐さんに気に入られたから、五十嵐さんの一派のヤツらを引き継いだのは知っている。 ｢ワリイ、あんまり肉がうまくって。峰ちんが困るとか、すげえアブナイ話？まあ、全部ハルちゃん絡みだろうけど、報復とかそーいうのはちょっと勘弁だけど｣ ウーロン茶を飲みながら、士龍は勘が良いのか核心をついてくる。 ｢そんなにいそがんでも、もっとうまいの焼いてやるからな｣ 五十嵐さんは、既に肉を焼き始めている。 ｢ハルカが、行方不明でな。…………探してんだけど。もしかしたら、ヤクザに拉致られてるかもしんなくて｣ 俺の様子に士龍は、肉を食うのを止めて軽く息をつく。 ｢ハルちゃんがか。そりゃ、心配だな……｣ ｢あんなことをした、俺らがオマエに頼むとか筋違いかもしんねーんだけど｣ 俺はなんだか、頼んでいることが図々しいにも程があるとか考えて頭をさげる。 高校の時、俺はコイツの恋人を拉致って脅したことがある。 こんなことを頼める立場じゃないのだ。 ｢筋とか、関係ねーよ。困ってる時は、お互い様だ｣