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第12話→sideRT

簡単に言ってくれるが、本当にいいのだろうか。 危ない話だし、例えば繋がりのあるヤツらに話すとしても、かなり気を使う話だ。断わられても仕方ないと考えている。 「前にさ、たけおがヤクザに拉致られたことがあって、そん時に昔のダチだったけど今はまったく関わりない奴が助けてくれたんだ。因果応報ってじいちゃんは良くいうけど、俺もその応報しないとなって。普通なら面倒臭いし、顔を突っ込む話じゃねーんだけどさ」 肉をフォークに刺すと、ちょっと考えこみながら士龍は答える。 「あー、それって、ナオヤから聞いたけど、ハセガワが手ェ貸してくれたとか。士龍、俺らのことも呼ばないンだもんよ、みずくせーんだよ」 将兵はぽんと手を叩いて思い出したように言う。 ハセガワと言えばこの辺で最強と言われた男だ。誰も奴に叶う強さはないと有名で、よく絡みに行っては負けていた。 うちの高校に入らず、進学校の北高に行ったのは七不思議だと言われている。 「ショーちゃんとかは、就職決まってたし。あんまりヤバイ目に合わせたくなかったんだ」 「真壁、ハセガワとダチだったのか?」 五十嵐さんは、さすがにこの辺の最強の男には興味があるようだ。 それにしても、俺も初耳だ。 金崎の話だと、ハセガワの弟が東に来たらしい。潰しにかかったらすぐに、士龍が自分のとこに入れたので手が出せないと言っていた。 「小学校の時のダチっす。俺の喧嘩は彼に仕込んでもらったんで、どっかの派閥入ったら戦わないとなんないと思って入らなかったくらい」 もぐもぐと肉を食べ始め、ちょっと思い出したように俺を見返し、 「だから、俺に話が来たってのも、めぐり合わせかもしれねーって思うわけ。なーあ、ショーちゃん、はやめに情報集めてきて」 「きたよ、無茶ぶり。五十嵐さんは、なんかツテあります?」 将兵もノル気のようで、座り直して五十嵐さんを見遣る。 「確か、俺が1年の時のアタマが、久住組の前の組長の息子だったかなァ。先輩に聞いてみてやる」 「ありがとうっす!ヤッター」 まるで自分のことのように喜ぶ士龍には裏がない。 「さすがに乗り込み、押し込みには加担できねーぞ」 五十嵐さんは、嬉しそうにはしゃぐ士龍のアタマをぺしぺしとたたく。 「そこは、学生の俺らの本分じゃねーかな」 「学生の本分は勉強だろうが」 将兵が突っ込むが、ショーちゃんより頑張ってると返されて閉口した。 「俺としては、ハルちゃんが無事に逃亡できてることを祈るばかりだけどね。なんだかんだ、ひょっこり帰ってきたらいいかなぁ」 「まあな、推理でしかないからな。とりあえず、情報だな」 俺は思わず、肩を落として目から出る汗を止められない。 酷いことをしたのに、因果応報だろって言われて切られて当然なのに。 因果応報だから、助けてくれると言う。 「なんだよ、峰ちん泣いてるのかァ?」 「ごめん、マジで、あの時のことを今後悔してんだ」 泣いたからと言って許されるような行為じゃない。 「え、俺のさされた傷は治ったぞ」 将兵は腹をさすりながら呟く。 どうやら、多分、士龍は将兵には俺達のしたことの全ては話していないようだ。 チラと士龍を見ると、将兵の顔を見て首を横に振る。 やっぱり、そうだ。 「ワリイ、感傷的になっちまった」 ゴシゴシと手の甲で涙を拭う。 「峰ちんが、ハルちゃんを大好きなのはみんな知ってるからなァ。情報集めて、捕まってんなら早く救けンぜ」

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