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第18話→sideH

悶々としながらもいつの間にか寝ていたらしく、気がつくとソファーの上に寝かされていた。 串崎という男もいないし、逃げるなら今かもしれない。 はたして、逃げられる、か? 足は撃たれていて、きっと普通には走れはしないだろう。 逃げて捕まったら、今度は確実に殺される。恐怖とかじゃなく、それは事実だ。 あと250万と決まった金額で自由になれるなら、そっちを選んだ方がいいに決まっている。ケツの穴ほじられるくらい、もう仕方ねー話だろ。 「あら、起きてたの。静かだからわからなかったわ。これから売られるってのにおとなしいわね。名前、教えてくれる?」 串崎がビール片手に俺に近づいてくる。シャワーを浴びたばかりなのか、半裸で髪も濡れている。 「ハルカ。まあ、今更暴れても仕方がねェし」 「ハルカね。さっき、トラさんから連絡きて、アンタの売り先決まったらしいわよ」 「そう、か」 喧嘩で負けた男のケツとか、皆で回して楽しんだこともある。脅して無理矢理ヤッたこともある。 だから自分だけがその対象じゃねーとか、そんなのムシがいい話だと思う。 腹は括るしかない。 「ハルカ、アンタさあ、無気力すぎない?いいの?」 「よかねーけど、そんなことよか殺されるよか大分マシだろ」 「買ったのが誰とか気にならないの?」 「誰と言われても、わかんねぇし、額しか気になんねーよ」 ちらと串崎をみあげると、飲みかけのビールを手渡してくる。 「まあ、SM行為OKで売ったからね。そっちの世界でも有名なひとよ。気に入られたらかなりお金は稼げると思うわ。アンタみたいなの欲しがってたし」 くすりと笑い、棚から赤い首輪をとると俺の首に嵌める。 「まあ、マゾに目覚めちゃったら、責任はとってあげるわよ。安心しなさい」 俺は手にした缶に唇をつけて、こくんと飲み込む。 苦いだけの液体で美味しくはない。 ビールってこんな味だったかねぇ。 「逃げてもさ、帰るとこも行くとこもねーんだよ。これで金返したとしても、俺にはなんもねーからさ」 「悲しくなることは言うものじゃないわ。でも、そういう弱い子は嫌いじゃないわね」 串崎は、そういうと俺のシャツを手渡す。 「最初が汚い豚オヤジじゃなくてよかったわよ。アナタの相手はまあまあ若い方。歳は30くらいかしら、SM趣味がなければね、見た目めたイィ男なんだけど」 「調教師が何言ってんだか。こんなキタネー男にカネ払うってなら、SでもMでもしてやんよ」 ハゲ散らかしたオヤジに掘られることを覚悟してたが、そうでもないようだ。 容姿なんか男なんだし、全然関係ねーけど。 「まあ、男らしい。トラさんも、自分のとこの兵隊にすればよかったのにねぇ。じゃあ、車をまわしてくるから着替えてなさい」

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