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第25話→sideRT

尋ねた途端に工藤さんの表情が目にみえて曇る。 まさか。 死んだとか。 手遅れだったとか。 俺の拳が汗に濡れてじっとりしてくる。 いなくなったときに、すぐにもっと早くなんとかしとけば良かった。 …………後の祭りってわけか。 工藤さんは、俺の肩をぽんとたたいた。 「俺の彼氏ンちに監禁されてんだけどな。もし、オマエらが奪取したら、困ったことに彼氏に迷惑かかんだよ」 それ以上には情報を与えられないとばかりに、工藤さんは首を横に振った。 彼氏とか、ちょっとビックリしたが、まあ、ヤクザでもそういうこともあるだろう。 「…………生きてはいるんっすね?」 なんとかして、どうにかして取り戻さないとならねー。 「ああ、松川の仲間が奪ったもんの肩代わりで金を返すとかで、身売りしてる」 「いくらだか、わかりますか。話つけて、俺が金を出します」 逃げたり奪取したりしても、結局は逃げきれないし、その後まともに生活なんかできない。 いくらだろうか。 足りなければ借金しでても出さないとならない。 「バカだな。素直に金払ったら、カモにされるぞ。簡単にそんなこと口にするなよ」 工藤さんは馬鹿にしたように俺を見返した。 じゃあどうすりゃいい。 1千万でも2千万でも、俺はハルカのためなら惜しくはない。 「んー、じゃあ、俺たちが事務所乗り込もうかな。流石に高校生が乗り込んだら、卑怯なことはできないだろ?」 士龍がゆっくりとした口調で、工藤さんに問いかける。 「ヤクザ舐めるなよ。ガキ」 「ナメてはいないすよ。ただ、ちゃんと話をつけにいくってだけで。工藤さん、事務所の場所を教えてください。お金の話はあるかもしれないから、峰ちんも覚悟はしといて」 工藤さんを見据えて、士龍は小さく不敵に笑う。 不敵な態度はいつだって変わらない。 ハルカが好きだったってことも含め、そういう余裕ぶったところが俺は気にくわなかった。 「俺はこれ以上かかわらないからな。そこの地域をシメてる若頭には関わりたくねーんだ。後輩のためだから、仕方なく情報をくれてやってるだけだ」 工藤さんは意外にいいやつなのかもしれない。 忠告はちゃんと聞いておく。 金の話は最後にしよう。 「若頭か、スゲー強そうだな」 「サクラトラノブ、うちの組の武闘派No.1だ」

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