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第33話→sideRT

最初から、命張る覚悟は出来ていた。 ハルカのためなら、今まで俺はどんな汚れ仕事だってして構わないと思っていたし、実際どんな卑怯な手段も汚いこともした。 だから、ここで怯んで引き下がる気はさらさらなかった。 「知らないわけはない。駅前のunder Bordeauxという店に居るのは分かってんだ。だから、上の者に話をつけに来た」 俺は倍の歳はありそうな男の頭の上から、睨みつけるよくに見下ろす。 数をこなしな喧嘩で身につけた威嚇は伊達ではない。 だが、男もヤクザである。俺を無言で威圧感を与えながら、どこか探るような目をしてくる。 「知らないな。……そんな店も、ガキも」 しらを切っているのはすぐにわかるような口調だ。 こいつから聞き出すのはかなり骨が折れそうだな。 だけど、ここで引いたら何もなくなる。 何か話を引き出す方法はないか。 しばらく睨み合いは続き、周りの構成員たちもざわついてくる。 「おい、ガタガタうるせーなァ。こちとら、仕事の話の途中なんだよ。ん?こりゃ、なんだ?ここはガキのくるとこじゃねーぞ。エイゴ、テメェもさっさと追い返せ」 スーツ姿の態度のでかい男が、のんびりとした口調で階段でフロアに降りてくる。 「あ!!」 ちょっと驚いた表情をして、長谷川の弟がいきなり男の方へ飛び出す。 構成員も慌てて銃を取り出す。 ちょ、待て!! 俺はビックリして掴んでいた男の襟首を放し、隣にいた士龍がすぐに床を蹴るのをスローモーションのように目を見張ったまま見つめる。 「キタラぁ!!伏せろぉー!!」 ズキューンと乾いた音が空気を震わせたのと、キタラを突き飛ばした士龍の体が、床へと打ち付けられて跳ね返ったのが見えた。

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