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第34話→sideRT

一瞬頭が真っ白になって、俺は床へと倒れた士龍に向かって駆け出す。 「をい!士龍ちゃん。おい!大丈夫か!嘘だろ!」 珍しく取り乱して、俺は奴の体をグイッと掴む。 こんなの、ねえだろ!? 「動かすな」 空気を切り裂くようなピリッとした低い声がかけられる。 「テメエらも、すぐハジキ出すんじゃねェ。高校生のガキ相手にワシがどーこーなると思ったのか?堅気には手ェだすないっとるだろ」 叱責する声が聞こえるが、俺はそれどころじゃない。 助けてくれると手を差し伸べてくれた奴が倒れたのだ。 「っ、峰ちん、大丈夫、……肩をちっと掠めただけだ」 むくりと奴は身を起こして、かわした風情で肩を軽く払う。 「それにしたって、キタラちゃん、いきなり飛び出したらダメだろ」 庇って体の下にひいた、長谷川弟の頭を撫でてかいつものように余裕そうに笑う。 掠っただけとか言ってるが、シャツの隙間からわずかに血の色が見える。 どんだけ痩せ我慢してんだ。アホ。 「間違って殺したらどうすんだ」 「若頭。そん時は、まあ口封じをしてですね」 言い訳をする男を、若頭と呼ばれた男が容赦なく殴りつける。 「シロさんゴメンナサイ。パーパがいたから、つい」 ちらっと長谷川弟は、デカイ図体の見るからに大ボスである若頭を見上げる。 「それにしてもなあ、おい、北羅、どうしてこんな危ねーとこにいるんだ?まだ、オマエは学校の時間だろう?勉強はいーんか、またかーちゃんに怒られんぞ」 見下ろす相手は、長谷川弟を認めて少し慌てたような表情をする。威圧感が急激になくなる。 「学校の先輩を助けにきたんだよ。えっと、こっちはお世話になってるシロ先輩だよ。パーパ」 まさか、愛人とかのパパじゃねーよな。 だとしたら、父親なのか。 そういや、ハセガワのオヤジはヤクザというのはもっぱらの噂だった。 オヤジさんはどう格好をとっていいのか分からなくなった様子だったが、 「オイ、応接室を空けてこい。それと、主治医も呼べ」 と、構成員に命じると、こちらにこいとばかりに顎をしゃくった。 士龍の肩を担ぐように無言で富田は体を支えて歩き出した。 「弾は残ってないし、掠ったってのもあながち嘘じゃないが、肉を貫通してるだけだからな」 じいさんの医者が士龍を手当しながら、我慢するなとか、無茶するなとか説教をしている。 「うちの北羅を庇ってくれて有難う」 「当たり前す、キタラは俺のトコの大事な仲間なんで。おじさんはキタラのおとうさん?」 士龍ムチクチャ失礼な聞き方で肝が冷える。 「まだまだ子供だと思ってたが、こんなとこまでくるようになったんだな」 子供の成長を見守る父親そのものである。 「で、こんな所まできてしたい話というのは何でえ?」 一転して、話を聞いてくれるような雰囲気になった。 これなら、ハルカを助けられるかもしれない。 「ミネ ハルカと名乗っている奴を、返してほしい。駅前の店にいると聞いた」 俺は思い切って話を切り出した。

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