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第43話→sideRT
思わず口に運んでいた唐揚げをテーブルにポタっと落としてしまい、俺はあんまり大きくはない目をこれ以上になく見開いた。
ハルカは、一体何を言ったんだ。
流すと思っていた陳腐な言葉にも反応していたし、どことなく顔色が赤らんで見える。
「キャハハ、ハルカ、なんだよ。そんな言い方すんなよー。ごほうびというか、俺にとっちゃ何より大事なもんだ。…………そんな簡単に差し出すな。出ていかれて、実感したし。今は、ちと、心細いのはわかるけどよ」
なんだか戸惑ってしまって、つい逃げ腰になる。
ちょっと、待て。俺。
いまのは、これは据え膳だったんじゃねーか。
慌ててハルカの顔を見ると、唇がわなわなと震えている。怒り出す前兆だ。
「…………もう、言わねェ」
低い声がかなりの怒りを孕んでいる。
どうすりゃイイってんだ。
トリセツは1通り読んだが、具体的な対処法はあまりかかれていない。
まさかの、これはハルカからのお誘いだったってのか。
幼稚園から苦節15年、願望が叶うのか。
でも、もう言わないとかいったよな。
ちょっと、時間巻き戻らないか。
「ハルカ、ゴメン。オマエを笑ったわけじゃねーくて、そんなに簡単に差し出されたら、俺の気持ちとかさ、色々、違うかなとか」
言い訳もうまくできない。
トリセツに書いてあるとおりなら、ハルカの体は男を求めて仕方なくなっているとあったが、どうにも信じられない。
確かにケツで自慰してたのは、見たけど。
ガタンとハルカは椅子を蹴り倒して勢いよく立ち上がる。
「うるせェ、オマエのキモチなんかどーでもいーんだよ。…………分かってて連れてきたんじゃねーの?オマエがイラネーってなら、俺はハッテンバにでも行って、テキトーな奴に突っ込んでもらってくるだけだ」
苛立った声が少し上ずって空気を裂き、心持ち痩せた表情が、ひどく辛そうに映る。
ハッテンバとか、いくとか、ありえねー。
ヒデーこと言われているのに、俺は何故か興奮していた。
「ハルカ、だったら御褒美とか、言うなって、オマエはモノじゃねーんだから」
俺の中のモヤモヤは、そこだ。
大事な人だから、そんなモノのように言って欲しくなくて。
イカれた身体だとしても、モノじゃない。
俺はハルカの肩をぐいと掴んで腰を引き寄せる。
「ハルカが必要なら、俺がバター犬にだってなれっから」
ガキの頃から1回りでかくて、力任せに人を従えるハルカが、カッコよくて可愛くて憧れだった。
だから、ずっと傍にいたくて、1番頼れる奴だと思われたくて仕方がなかった。
わしゃわしゃとハルカの大きな手が俺の髪を撫でる。
「…………ほーんと、バッカじゃねーのか。ガッコの時なら猿山の大将できたけど、今の俺なんか、荷物でしかねーだろうが。いい加減、イヌとか言ってんな。俺は、獣姦は勘弁だッ」
「俺は、バカ……だな。ハルカ…………好きだ……」
ハルカの少し痩せた体を抱き返して、俺は何度も告げた、
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