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第63話→sideH

俺はすぐに反射的に起こった体の変化に、思わず後じさりながら、水上から距離をとった。 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ! 激しい危機感に頭の中で警鐘がガンガンと鳴り響く。 関わってはいけないと、何度も何度も頭の中の理性は叫ぶが、なんだか身体は重たくて仕方がないように動かない。 「へえ…………こんなに早く会えるなんて、僕のおこないが良いから、きっとトイレの神様が願いをかなえてくれたのかな」 すぐそこに便器があるのに、俺は用を足すことも出来ずに恐怖と身体の歓喜に何もできなくて佇んでしまう。 「…………く、くるな……、くるな」 頭の中の警鐘が、ガンガンと脳内を響かせて痛みを与えてくる。 「酷い言い草だね。……あんなに可愛がってあげたというのに」 少し眉を寄せて端正な顔を、わざとらしく悲しそうに歪める。 これ以上は、堕ちたくはない。 なにより、ライに今度こそ顔向けができない。 「串崎からは聞いたよ。ハルカ。お迎えがきたんだって?本当の飼い主だったの?」 制止もやむなく、水上は俺の傍にきて視線を下半身に向けてふっと笑みを刻む。 「飼い主とか…………じゃねえ」 「また、言葉遣い忘れちゃったのかな。せっかく、可愛くしつけてあげたのに台無しじゃない。でも、身体の方は覚えが良かったみたいだね」 笑いながら俺の腰に腕を回してくる。 いま蹴り倒さなければ、また逆戻りだ。 水上の視線から逃れながら、首を左右に振る。 「…………契約は終わった。それだけの話だろ」 「そうだね。串崎にした契約は終わったけど、ハルカ、君と今度は新しく結べばいいことだよ」 耳に心地の良いテナーの声を響かせ、俺の下肢を視線だけでいたぶるような目を向ける。 水上は、面白がるように笑みを向けて、 「君の意志が大事だからね。契約、したくなったらいつでもおいで」 ポケットから、1枚の紙を取り出すとジャケットの中に押し込める。 「欲求不満って顔でわかるよ。君を満たせるのは、僕だけだって、すぐにわかるよ」 自信満々に言ってのけると、彼は俺の脇をすり抜けてトイレを出ていった。 俺は膨らみ腫れてしまった、股間に目を落として唇を噛み締めると、個室の中へとかけこんだ。 どうにもならない滾りと、敗北感で胸を締め付けられてジャケットの中の紙を破り捨てようと取り出したが、何故か破れずに、胸元にしまいこんだ。

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