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第10話

 俵屋さんのほんのり赤い蕾に、先端を当てる。そのままギュウッと押しこめる。熱い壁に包まれて、極楽だ。じっとしているだけで気持ちいい。だが俺はもっと先の極楽求めて、いきなりハイスピードで腰を振った。もちろん、剃り跡が当たって俵屋さんの尻がチクチクしないよう、気を付ける。 「あっ…は…、俵屋さん…気持ちいい…」 「あっ、ああん…山田くん…いいよ…もっと…ああっ」  やべえっ、声が響く! 急に動きを止めた俺を怪訝に思ったのか、俵屋さんが首をひねってこちらを向いた。 「山田くん…どうしたの…?」 「あ、いや…音とか声が…よそに聞こえたらマズいかなって」  唇の端をクイッと上げ、俵屋さんが妖艶な笑みを浮かべる。 「大丈夫だよ。回りの音を聞いてごらん」  言われるままに耳を澄ませてみた。左側からはパンッ、パンッ、パンッ…という音に混じって、荒い息づかい。右側からは、ヌチャッヌチャッというおなじみの音に、同じく荒い息づかい。  もしやこれって…。 「この番組ね…業界では“ハッテン番組”って呼ばれてて、毎年シャワー室やトイレの個室で、何組かのカップルがヤッてるんだ。前からカップルだったり、俺たちみたいに共演して好きになったり…浮気もあるとか」  なんと! じゃあ両隣では好きな人のフンドシ姿に欲情した雄が、今まさに結ばれている最中なのかーっ!  そういえば個室が満杯だったとき、脱衣所にアイドル二人が戻ってきた。そして俺たちが風呂場に来ると、なぜか個室は一つしか開いてなかった。そういうことだったのか―!  ってことは、あのアイドルたちはこの個室で、俺たちみたいに愛し合っていたのか。そう考えると、なぜか両隣に対抗意識が出てしまう。競泳のときよりも、もっと強い闘争心が…!  俺が腰をグイッと押して深く入ると、“んんっ”なんて俵屋さんのせつない声が漏れる。調子に乗って、ガンガン掘る。両手をついて喘ぎ続ける俵屋さん。盛り上がる広背筋がセクシーで、フンドシをずらしたお尻がいやらしくて、幾筋も伝う汗が艶めかしくて。  後ろから手を伸ばすと、俵屋さんの先端がトロトロに濡れている。そこをクルクル撫でてあげると、上腕筋に力を入れるせいかモリッと浮き上がる。  そんな俵屋さんの筋肉芸術に加え、両隣の情事に煽られ、俺の腰は止まることを知らない。 「俵屋さん…すげえ…いやらしくて素敵ですよ…。それに、パイパンなせいか、チンコもきれい…」  天然ですか? と後ろからささやいたら、息も絶え絶えに“永久脱毛”と答えてくれた。  硬くせり上がった尻をパシッと叩くと、個室内に音が響いた。フンドシをずらした尻に、ほんのり赤い手の跡。全裸よりもいやらしく見える。 「あ…もっと…、ああっ」  もう限界だ。ドッグファイトはどうやら俺の負けだ。最後の乱撃! 空に散る前に、俺のF‐16ファルコンは機銃をぶっ放すぜ! 「俵屋さん…イク…イキますよっ」  俵屋さんの中からペニスを引き抜き、たくましい背中にぶっかけた。汗よりも濃くて流れが遅いザーメンは、筋肉のくぼみに溜まる。  俵屋さんのお尻がヒクッと締まり、床にボタボタと白い跡が落ちた。背中にあったやつじゃない。俵屋さんも射精したのだ。すげえ、トコロテンかよ。中だけでイケるんだ。 「俺が…体…洗ってあげますよ」  シャワーで体をしっかり流し、フンドシをほどいてあげた。ペニスはもう丸見えだけど、前袋を下ろすとタマもペロンと現れた。俵屋さんの、産まれたままの姿。パイパンだから、よけいにそう思う。無垢できれいだ。今まで見た、どんな裸よりきれいだ。俵屋さんは、俺にとってヴィーナスだ。  ボディーソープを泡立て、体を洗ってあげた。俵屋さんも手にいっぱい泡をつけて、俺の体を洗ってくれた。  そうしているうちにまたムラムラしてきたので、今日は俵屋さんちに泊まって、思い切り燃え上がることになった。  第二戦目の前に、腹ごしらえだ。俵屋さんが住むアパートの近所に、焼き肉屋があって、そこで夕飯にした。今日は運動したし、収録後にも運動したし、この後ももう一回するし、朝起きた後もするかもしれないので、食べ放題コースを頼んだ。  おしぼりで手を拭きながら、俵屋さんが俺に尋ねる。 「山田くん、ビールか何か飲む?」 「俺、下戸なんですよ。居酒屋でバイトしてるくせに」  まあ、ホストじゃあるまいし、店員は酒を飲む必要ないからな。 「そうなんだ。俺も下戸だから、ウーロン茶にしようか」  俵屋さん、ガタイがいいから飲めそうに見えるのに。そういや、筋トレにお酒はよくないらしいから、意外に飲まないってマッチョもいるしな。  二人でウーロン茶で乾杯し、ロースやカルビ、タン塩など次々に注文した。  焼きたてのカルビをご飯に乗せてかきこんでて、ふと思い出した。で、思い切って聞いてみた。 「そういや俵屋さん、どういう仕事してるんですか?」  サンチュでくるんだハラミを食べ、俵屋さんは辺りをキョロキョロ見回してから肩をすくめ、俺の方に身を乗り出した。 「実はさ…、ゲイビの男優なんだ」

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