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第5話
×××
あけぼの台公園。
藤井を見かけた時刻に、来てしまった。
ベッドに寝転び、エロ動画を探そうと携帯を弄っていた時、誤操作し、動画の画面が開かれ──夜の公園内に入っていく藤井の映像を見てしまい……
今から自転車で飛ばせば、撮影時刻に到着するかもしれないと思ったら……
一度、確かめてみたかった。
あいつが、男と茂みでセックスしてるのか。
……って。そんな事を知ってどうすんだよ、俺は。
ガシガシと後頭部を掻いた後、今し方乗ってきた自転車に跨がって帰ろうとした時だった。
「……!」
来た。
横断歩道を挟んだ反対側にいる俺に気づかず、藤井がスーツ姿の男性と手を繋いで公園内へと入っていく。
信号が青になり、自転車を転がしながら道を渡る。
公園入り口に自転車を乗り捨て、藤井の後を付ければ………
案の定、真っ直ぐ展望台へは行かず、外灯が殆ど無く不気味に草木が生い茂るだけの『憩いの森』へと向かって行った。
「……おいっ!」
威嚇した声を上げれば、その背中がピクンッと反応する。
先に振り返ったのは、サラリーマンの方だった。ひょろっとしていて何処か頼りなく、おどおどした態度にイラつきを覚える。
上着のポケットに手を突っ込み、ソイツを睨みつけながらクイッと顎で蹴散らすと、一人になった藤井に声を掛ける。
「よぉ、藤井。……お前、こんな所でナニしてんだよ……」
凄みを効かせながら、静かに佇む藤井に近付く。
俺は……コイツを脅して何がしたいんだ……
自分でもよく解らない衝動に、俺自身が一番戸惑う。
俺の声に反応した藤井が、俯いたままゆっくりと振り返る。
クスッ……
口の口角が、僅かに持ち上がる。
虚ろげな表情から一変。
悪戯っ子の様な笑顔を一瞬浮かべ、俺を真っ直ぐ見つめる。
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