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第10話
しかし、それはほんの数秒──
青白い光の中で、艶やかに輝く白い翼が根本からもがれ
ふさり、と地面に堕ちる。
やがて満月は雲に隠され、再び辺りは闇と化す。
「……」
果てて元の姿に戻った肉茎を、ズルリ…と引き抜く。
肩で息をしながら振り返った藤井は、恍惚とした顔をしながらも……何処か泣き出しそうな、恨めしいような表情を浮かべていた。
*
「……お前、やっぱ……ホモだろ」
身形を整えながら、雑草の上に力無く伏した藤井を見下ろす。
その周囲には、もげ堕ちたように見えた羽根は一切ない。
あれは、幻だったのか──
「……違うよ」
ぴくんっと肩が小さく跳ね、藤井がその意思を示す。
「……」
……もしかして今、初めて会話のようなものが成立した、のか……?
「亜由美の苦しみを、同じように受けたいだけだ……」
「あゆみ……?」
「……俺の、彼女……だよ」
彼女──
『中学の時、いたんだよ。藤井に彼女』──瞬間、美幸の言葉が思い出される。
「傷心の彼女を元気づける為に、俺は彼女を誘ってここに来たんだ」
藤井が、ぽつりぽつりと語り出す。
それは、去年の秋口──
部活で遅くなった藤井は、彼女を家まで送り届ける途中、一緒に夜景を見ようと誘い、この公園に足を踏み入れた。
時刻は夜の8時。
夜景を見るには、まだ健全な時間の筈だった──
彼女と手を繋ぎ、展望台へと続く道の途中……『憩いの森』への入り口に差し掛かった時。
「……藤井、くん……」
亜由美が照れながら藤井の手をくいくいと引き、その遊歩道脇にあるベンチへと誘う。
「あのね、少し……話があるの」
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