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第19話
背を向け、勝手に自己完結した藤井が俺の存在を無視し、身形を整え始める。
「………」
震える指先。
認識した時にはもう、藤井の細い首に両手を掛けていた。
「──お前、眠れねぇんだろ……?!」
その衝動に任せ、藤井の背中を地面に押し付けると上に跨がる。
籠めた力を緩める気は、毛頭ない。
後戻りなど──絶対にしない!
「彼女が犯されてる光景が頭にこびり付いて………苦しいんだろ? 夢にまで出てくる程によ……
だからここで、男にレイプごっこでもして貰わねぇと……その日を安心して終わらせられねぇ……
──違うか?」
「……」
「そうしねぇとお前は──明日を生きられねぇんだよなァ……!?」
藤井を上から睨みつけてやれば、瞳孔の開いた藤井が、瞳を小さく揺らしながら俺の深層部分まで探っていた。
「………だったら俺が、相手してやるよ。
お前の望み通り、酷い抱き方をしてやる。
毎晩……ここでな……!」
荒げる息を整える余裕もなく、藤井を見下げれば……涙で潤んだ藤井の瞳が緩み、僅かに口角が持ち上がる。
そして差し出される、細い首。
顎を軽く突き出し、俺の狂気を受け入れる──藤井。
蒼白い月光が辺りに射し、藤井の顔の一部を妖しく照らす。
「──明日も、来いよ!」
「………」
「いいなっ!」
脅さなくても、藤井は抵抗しない。
その深くて暗い闇のような瞳に、俺の方が飲み込まれてしまいそうになるのを感じた。
……まるで俺をこうさせるように、藤井が仕向けたみたいに……
「……」
指先を、緩める。
手を離し……自分の両手のひらをゆっくりと表に向ける。
その下で。一気に空気を吸い込んだ藤井が、咳き込みながら顔を横に向け、俺に首筋を曝す。
「──いい、よ」
月光に濡れ、蒼白く光る首筋。
艶やかな唇が割れ、濡れそぼつ赤い舌がチラリと見える。
「……また、明日……」
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