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第22話

* Γ___で、だ……これをこう読む理由はいくら愚かなお主とて分かるだろう?まさか、分からない訳ではあるないな?」 「…………全く分からぬ。もう少し簡潔に説明してくれると有難いのだが___」 鬼のように厳しいと噂の的である、警護人《朱戒》と対面しつつ異国語の資料と睨みっこしてから、かれこれ二時間ばかり経った頃だ。 流石に集中力が途切れてきたせいで、ついつい非番であるにも関わらず面倒事を引き受けてくれた彼に対して無礼な言葉を放ってしまった。 暫しの沈黙の後、眉間に皺を寄せつつも文句などは溢さずに、ため息をついた朱戒が手に持っていた資料をぱたん、と閉じた。 「____どうやら、指導を詰め込み過ぎたようだな。暫しの間、休息をとろうではないか。貴様が好む茉莉花の香茶を煎じてこよう。その間に、貴様はそこの本棚から足りぬ頭でも理解出来そうな資料を探すといい」 「す……好き勝手に見ても構わぬのか?親しい間柄の、友でもないというのに……っ__」 「____ごちゃごちゃと喧しいな。どうせ、貴様に見られて困るものなどないのだ。いいから、さっさと言う通りにしておけ」 すっ__と立ち上がった朱戒のその言葉を聞くなり呆然としてしまう。その顔からは、穏やかな笑みが浮かんでいて常日頃から【鬼のような警護人の朱戒】と噂されている彼からは想像もつかなかったからだ。 (もしや……朱戒という男は、皆が言うような鬼のように冷たい訳ではないのではないか……) ___などという下らない疑問は心の内に仕舞い留めておきながらも、朱戒の言葉に甘える形となったが、きっちりと綺麗に整頓された本棚の方へと歩んでいく。 そして、両膝を井草が香る畳につきつつ本棚を眺めながら役に立ちそうな資料を探し始めた。 しかしながら、決して頭が良いとはいえない自分でも理解出来そうな資料が見当たらない。それでも、最初の内よりかは大分異国の言語を理解出来てきたとはいえ、王都の顔ともいわれ代々受け継がれてきた儀式(大祭)で通用するようになるためには、まだまだ不十分だと不安を感じているため持ち主の朱戒に失礼にならない程度に本棚を漁る。 (それにしても……やたらと小童説話が多いな__朱戒には……息子や娘などはいないはずだが……いや、そんなことを気にしている場合ではない……さっさと資料を探さねば……っ……) 小童説話とは、生きていく中でやってはならないこと、どのようなことをしたら罪となり罰せられるか__ということを幼き童子でも分かるように画と文字でもって教えを説いている書物だ。 普段から鬼に憑かれたかの如く警護人の公務をしていて、なおかつ結婚相手や子のいない朱戒が何故にこのような書物を本棚に収めているのか気になったものの、再び資料を探すために周りの書物を漁る。 ことっ____。 すると、本棚の奥――または脇の方から何かが畳の上に落ちたのだった。 *

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