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第25話

* * * 「随分とご機嫌のようだが…………煌鬼よ――久方ぶりに娯仕店区にて酒盛りするのが、そんなに嬉しいのか?てっきり、朱戒の奴に勉学漬けにされて――落ち込んでいるものとばかり思っていたが……よもや、これでも出来たか?」 久方ぶりに、希閃に誘われて娯仕店区内にて酒盛りを交わしていると、酒気を帯びて赤くなった頬をあらわにし、尚且つにやけ面のまま彼は親指をくいくいと動かしながら尋ねてきた。 その動作が示す意味は、要するに『愛する女でも出来たのか』というようなことで、ふざけながら希閃は聞いてきたのだ。 「べ……っ……別に機嫌がいいという訳でも愛する女が出来た訳ではない__ただ、こうしてお主と久方ぶりに酒盛りを交わすのが……その__た、楽しいだけだ!!」 おそらく、希閃は普段通りに自分のことをからかっていただけだ__と、はっと我にかえってみても遅すぎた。 これでは、余計に好奇心旺盛な希閃の興味を引くだけではないかと思い至って、自分の愚かさを自覚した煌鬼はその気恥ずかしさを誤魔化すために一気に並々と盃に入った酒を飲み干したのだ。 「冗談、冗談だとも…………煌鬼よ、お前は何をそんなに、むきになっているんだ?少し娯仕店区内を歩き回ってみてはどうだ?あの大事件があった後で新しい店も増えたらしいから、いい気分転換になるだろう。もしや、お前……共に勉学し過ぎているせいで朱戒といい仲になったんじゃあるまいな?」 「それこそ冗談を言うな……あんな生真面目過ぎる奴は……俺は好かん__それよりも、希閃よ……お主、何か買ってきて欲しいものはあるか?今日の礼に……何か奢ってやらなくもない……さあ、何がいいか言え」 煌鬼がそう尋ねると、希閃は僅かに考える素振りを見せる。 暫くの沈黙の後に、とある場所を指差した。 「彼処に、薬膳酒の店があるだろう……実は知り合いの気分が優れなくてな――《冠慈紅》という名のものを一瓶欲しいのだ。ああ、それとその向かいの店に宝玉屋があるのが分かるか?彼処で《燐灰石》というものを買ってきてくれ__ある人に、それを贈ろうと思っていてな……では、頼んだぞ?」 「何だ、何だ……お主こそ――これ、がいるのではないか?」 希閃の頼み事を聞いて、煌鬼は先程の報復だといわんばかりに、先程の彼と同様に親指をぐいっと何度か動かした。 すると、思いのほか希閃は頬を真っ赤に染めて「ええい、いくら無二の友だからといって……そのように、からかうでないぞ!!」と何処となく照れくさそうな反応をしたため目を丸くしながら驚いた煌鬼だったが、すっくと立ち上がるとそのまま彼のお使いを済ますために覚束ない足取りでふらふらと店の方へと歩いて行くのだった。 * * *

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