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第39話

「今まで…………我はお前のことを実の子のように育て上げてきたつもりだった。それは、お前には実の両親がこの世を去ったと伝えていて尚且つ寂しい思いをさせてしまってきたせいだ。だが、それは……嘘だ。お前の両親は……この世を去ってなどいない――生きている」 「……っ____」 世純の口から発せられる告白を耳にして、確かに煌鬼は驚きを隠せずに息を呑む。しかしながら、その後に再び世純の口から発せらる重大な己の出生についての告白を聞いてしまうと、思わずその場に崩れ落ちそうになってしまうくらいの凄まじい衝撃を受けてしまった。 その出生についての重大な告白____。 それは、この世を去ったと思われていた両親が何とこの王宮内にいるとのことだ。 それすなわち、煌鬼は己が知らず知らずのうちに両親とすれ違っていただけでなく、もしかしたら既に遭遇していた可能性まであるということだ。 それに気付いた煌鬼が、額に汗を滲ませ眉を潜めながら世純に聞くことなど、ただひとつしかない。 「世純様、私の両親が……まだ生きていて王宮内にいるとことは分かりました。しかしながら、何故に私の両親はこの王宮内にいるにも関わらず既にこの世を去ったことにして息子である私から隠れるように暮らしているのですか……いえ、こうなれば率直に伺います……私の両親とはいったい誰なのでございますか?」 どくん、どくんと心臓が脈打つ音が酷く大きな音となって己の身に襲いかかってくるようだ。 もちろん、煌鬼としては今までこの世から去ったとばかり思っていた両親が存命していることが嬉しくないとはいえない。 しかしながら、どうしても嫌な胸騒ぎが拭えず世純の口から両親の名を聞くことに対しての緊張の方が遥かに大きかった。 「お前の母の名は……翻儒。今は亡き、かつて我と友といえる間柄だった魄という者の幼なじみの男であり、なおかつ……かつてこの世に呪いをかけ滅ぼそうとしていた野望を阻止するために我と共に戦った仲間でもあった。しかし、今は訳あって王宮のとある場所に幽閉している」 「そ、それは……何故なのですか?それに、幽閉しているのは……もしや、世純様……あなた様なのではございませんか?」 「まあ、その通りなのだが……その訳を詳しく話す前に、まずはお前の父親が誰かというのを説明せねばならない。煌鬼よ……お前の父親は____」 世純が、此方へと近づいてきて戸惑いの色を浮かべている煌鬼の耳へとゆっくりと口を寄せた。 そして、ある衝撃的な事実を告げる____。 「お前の父親は、この国の現王であられる珀王様である。つまり、煌鬼よ……お前は正室である王妃以外の存在である翻儒と現王である珀王様との間に生まれた庶子なのだ。秘密はそれだけではない。お前は時期王候補である天子様達が生まれなかった場合の非常事態を避けるために……いわば保険として産んだ子だったのだ」 世界中が、ぐるりぐるりと回っているかのような激しい立ち眩みを感じて立っていられなくなり思わず枯れ木と化した桜の幹に身を任せてしまう。 すぐに世純が、真っ青になっている煌鬼を支えようとする。 しかし、頭が混乱しきってしまい世純の気持ちを察する余裕などない煌鬼は彼の優しさともいえる行為を手で払いのけ、鋭く睨み付けることによって拒絶しようとしてしまうのだった。

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