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第112話
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燦々と輝きを放つ朝日が、目に染みる。
山を挟んだ向こうの方からは、騒がしい烏と鶏の鳴き声が聞こえてくる。
「よし、ここで休息に入る。あと少しで下足部《五合目》に辿り着けるが、くれぐれも遅れるな____少しでも遅れた罪人は容赦なく切り捨てるやき覚悟して登れ」
監視守の男の声で、ようやく下足部と呼ばれる山道のうち《三合目》へと辿り着いたことを知る。
そうとはいえ、既に王宮からこの【逆ノ口鉱山】へ来てから一日が経っているし、他の罪人から聞いた所によると【下足部、五合目】までは急ぎ足で登ったとしても、良くて明日の朝か最悪昼頃までかかるとのことだ。
王宮に過ごしていた時は、まるで考える必要などなかった食料不足の問題――更には、今まで体を鍛える習慣が殆ど無かった故に起こる体力不足の問題が厭が応にも頭の中に過ってしまい正直なところ不安しか残らない。
しかも、だ____。
これが自分一人の問題なだけなら、まだ良い。
しかしながら、煌鬼には自らと同じように王宮の暮らしに慣れ親しんだ允琥の身の安全を護る義務がある。
つい先程、監視守の男達から順々に手渡された食料は僅かな量の山菜を煮た料理と一人につき握り飯一個のみであり、王宮に暮らしてきた頃の食事とは天と地の差だ。
むろん、肉を使った料理など振る舞われる筈もない。
今更ながら王宮にいた頃の白守子の暮らしでさえ、どれ程恵まれていたのか身を持って知ることとなり、泣き言ばかり胸の内に吐露していた今までの自分に対して余りの情けなさに固く目を瞑り遠く離れた王宮へ思いを馳せる。
自然と、他の罪人達の方へと目線が移る。
(いくら本物の罪人といえども……流石は今まで過酷な暮らしに耐えてきた者達だ――これだけの悪路を歩いてきているというのに、我々と違って殆ど息が上がっていない____)
腸のように曲がりくねっただけの道が続くとはいえ、決して歩き続けるのが楽とはいえないのは、そこらかしこに大小の石が転がっていて油断をしていると足をとられてしまい転んでしまうことにある。
他の罪人達は【自由を奪われているとはいえ衣食住が確保されている】王宮ではなく、【自由を手にしているが衣食住が確保されているとはいえない】村や貧民街で暮らしきたため、恐らくこのような山道を歩いてきた者が殆どなのだろう。
大小の石につまづいても転んでしまう者などいないし、中には監視守の男達の目を盗んで、そこらに生えている雑草(食べても平気らしい)をもぎ取って口に運んでいる者までいた。
他の罪人達の逞しさを目の当たりにして、悔しさと羨ましいという気持ちを煌鬼が抱いた直後のこと、ふいに意外な存在が煌鬼と允琥の前に立ち塞がり、決して順調とはいえない歩みを邪魔するのだった。
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