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第5話
急に時間が空いてしまい、セイブルは普段はあまり歩かない教会の裏側を散策することにした。
いつもジオラルドの後ろにつき従っていたため、教会の裏に庭があるなんて知らなかった。
裏庭があるのは知っていたが、これほどまでに立派な薔薇の園があることを知らなかった。
レンガで作られた道を歩いていくと、東屋に行き着いた。
「おや、セイブルか」
東屋のベンチで長い足を組みながら、本を読む先客がいた。
面頬の男、シュバルツだった。
……どうも、この男は気に入らない。
この男は三年前、キオ公国からやって来て以来、国王に取り入り、城内の教会の司祭になった。
どう国王に取り入ったのか分からないが、底がしれない男だ。
「そんなに睨まないでくれ。怖いなぁ」
飄々としたこの態度も気に入らない。
ジオラルド殿下も何故かこの男に懐いている。兄上たちと歳が近いから重ねておられるのかもしれない。
「……何故貴方がここに?」
「何故って、ここは教会だろう?司祭である私がここに来るのは不思議じゃない」
「それはそうだが……」
「セイブル。君とは一度ゆっくり話をしたいと思ってたんだ。ここに座るといい」
木の椅子を勧められ、そこに座る。しかし、シュバルツはしばらく何も話さず、本を読んでいる。
話がしたいのではなかったのか……!と内心、ムカムカとしていたが、仮にも相手は皇族直属の司祭。
宗教が重視されるこの国では、親衛隊隊長よりも身分は上なのだ。
パタン……と静かに本を閉じ、シュバルツはセイブルを見つめた。
目を逸らしたいのに、何故か逸らせられない。
ピンと張った糸で繋がっているように、シュバルツの真っ黒な瞳からは目が離せなかった。
「セイブル。君は、ジオラルド殿下にただならぬ感情を持っているようだね」
「な……っ、何を……」
「隠さなくても良い。私は少し人より気持ちの機微というものに聡いところがあってね。君の感情も分かるのだよ」
ニヤリと笑うシュバルツの目は何もかも見透かしているような……セイブルの心の内を見ているような、そんな怪しい光を宿していた。
「叶えられぬ恋とは、本当に苦しい……。けれど、強い君ならジオラルド殿下の身も心もお守りできるはずだ」
「殿下の身も、心も……」
意味深なシュバルツの言葉が妙にひっかかる。
身を守ることは今までもしていたことだが、心を守るとは……一体何だ。
「私はこれから、城の教会に戻ろうと思う。君はどうする?」
「私は……」
「教会に戻ったら、もっと深く君の話を聞いてあげられるよ。何か力になれるかもしれない」
シュバルツの不思議な空気に惹かれるように、セイブルは小さく頷き、シュバルツとともに教会に行くことになった。
その夜、セイブルは自室で書類を書いた後、机の引き出しの中から、封筒を一枚取り出した。
帝国の蝋印も押されており、既に開封済みの封筒の中には、一枚の写真が入っており、その写真をじっとみつめる。
「ジオラルド様……」
その写真は、叙勲式でセイブルが勲章を下賜された時の写真で、まだ13歳になられたばかりのジオラルド殿下が皇帝陛下の代わりに勲章を渡されていた。
小柄な殿下の前に跪き、自分の胸元に小さな手で勲章を付けられる。
『セイブル=アストリア殿、この国をずっとお守りください』
ふわりと笑うジオラルドに、セイブルは心臓を掴まれたような気持ちになった。
こんな気持ちは初めてで、しばらくジオラルドの顔をじっと見つめてしまい、他の衛兵に声をかけられていたことに全く気づかなかった。
「ジオラルド様……っ」
気づけば、自分の右手をズボンの中に入れ、息子を慰めてしまう。
殿下の優しい顔が、快楽に歪み、喘ぐ姿を思い浮かべる。
「ジオラルド様……ジオ……うっ……あぁ……」
殿下を愛称で呼ぶなど、一介の騎士には許されない。
けれど、想像の中で犯すジオは愛らしくも淫靡。
すぐにセイブルは自分の種がせり上がるのを感じ、達してしまった。
「うぅ……っ!!」
ぬるりとした白濁の液は右手を濡らし、今夜も自分の主である殿下を汚してしまった背徳感に苛まれた。
何故、こんなにも年端のいかぬ少年に惹かれてしまうのだろうか。
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