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第8話

 銀行員風スーツのスタッフがユキの手首を戒めていた絹を取り去っていく。  それはオレの要望が通ったからなのだが。 「ユキ……。初めてなのだろう?こちらを使ったセックスは」  耳たぶを甘く噛んだり、舌を辿らせたりしながらこっそりと聞いた。そして小さな蕾のようになってしまっている、ローションで濡れた穴をそっと指で押した。「こちら」がドコなのかをユキがキチンと分かるためと、オレがこれから――出来るだけ苦痛の少ない方法で――挿れる場所の今の状態を確かめておきたかったからだ。  ただ、マッチョな男とユキの絡みを見たがっていたと思しき客は控えめな――何しろ、この場のルールに従えば最高落札者である詩織莉さんの要望が最優先されるのは言うまでもない――ブーイングと、これから始まる本番ショーに期待する声とか歓声でもっと大きな声を出しても観客席には届かないだろうが。 「そんなに胡蝶蘭があるのだから、舞台の上に敷き詰めたら素敵な愛のベッドになるわよ。さっさと用意して頂戴。お花が足りないというのならその分もまとめて請求してもらって結構よ」  詩織莉さんの――歌手ではないし舞台経験もないのに、キチンとボイストレーニングを積んでいるのだろう――良く通る凛とした声が舞台女優さながらに響いていた。  慌てたような感じで胡蝶蘭の花を殺風景な感じのマットの上に撒いている。 「初めてです。  それに、指を挿れられただけで物凄く痛かった……」  震える声が可憐に響いた、ごくごく小さな声が。 「コツがある。反射的に穴を締めてしまうだろうが、開ける感じに出来るだろうか?  本来の穴の使い方のような感じ……といえば分かるか?」  催淫剤入りのローションで濡らされた乳首をゆうるりと円を描くようにして愛撫しながら、スーツの男に目配せを送って催淫剤入りのローションの容器を手渡すように促した。 「ああっ……それっ……気持ちイイっ……」  先ほどよりも艶っぽい甘い声がユキの唇から零れている。しかも声は二倍くらい大きく。  催淫剤が効いているのかと思いきや、ユキの自由になった細い腕がオレの後頭部を縋るように掴んだかと思うと、顔だけを後ろに回して、唇が重なり合ってもおかしくない距離になった。 「分かった。出す感じでイイのかな?ほら、毎朝とかのトイレタイムに、さ」  意外と明晰な声だった。身体のあちこちに催淫剤入りのローションが塗り込まれているとは思えないほど。 「ああっ……乳首……気持ち良いよぉ……。もう片方も、お薬使ってっ……。  それに……お尻の穴……ジンジンしちゃって……震えているっ……。  指でかき回してっ……」  甘く高い声に変わったユキが「淫らな」愛撫と見せかけて、オレのアドバイス通りにすればどうなるのかを確かめたいと思っているのが、「指でかき回して」と言った時の口調が先程の明晰さの片鱗が混じっていることで分かってしまった。  893がかかわり合った、しかもこのような場所で、本番ショーを強いられる人間というのは、頭の回転が鈍いとか、薬漬けになったジャンキーか、色以外に売り物がないかしか考えられないが、ユキの場合その例外のような気がする。  それに、オレの「本来の穴の使い方」と聞いて「毎朝のトイレタイム」と咄嗟に言い換えたのも頭の回転が速くて、かつ下品な言い方に慣れていないという感じがする。 「もう少し待っていろ。直ぐに蘭のベッドが出来るから。  それまでは、乳首で我慢していろ……」  ショーである以上はお客様を愉しませなければならない。  オレも店では――ショーはないが――女性の客を飽きさせないように、そして何よりも楽しませるように色々な話題を振っては笑わせてきた。こちらの観客は笑いなど求めていないが、それよりももっと刺激的で淫らなショーを求めている。  だとしたらそれに応えるべきだろう。  ユキを観客側に向かって立たせて、二つのほんの小さな乳首を指でリズミカルに弾いた。 「ああっ……いいっ……いいよぅっ……」  ユキの声がよりいっそうの艶めかしい高さに変わっている。 「あの子、本当に感じてるみたいだね。ジュバンの前がテント張ってら……」  ジャニー○系の青年が半ば憎たらしそうに、そして残りは羨ましそうに言っているのが微かに聞こえてきた。  客席にはタブレットが有るので色々なアングルからそういう状況も確かめられるのだが、あいにく舞台の上ではそのような物はない。  片手を乳首から引き締まった腹部、そして腰骨の出た辺りまで扇情的に手を這わせる。  半ばはだけた紅い絹と薄紅色の素肌のコントラストは綺麗なハズだ。 「ああっ……んっ……。前……弄ってっ……」  ユキの喘ぎ声は赤い絹よりも艶っぽい。  スーツ姿の男が舞台に惜し気もなく胡蝶蘭の花を敷き詰めているのをチラりと窺いながら、びっしょり濡れた紅い絹を払いのけてユキの可愛いモノが、それでも天を向いて立ち上がっているのを確認した。  そして舞台の上で膝を付いて、片手では乳首を強く弱く弾きながら先端部分を舌で舐めてみた。ヒクリと薄紅色に染まった太ももが動く。先端からくびれの周りまで舌を広げたり窄めたりしながら口淫を施すと、さらに上半身が傾いできた。若木のようなしなやかさと艶やかさで。 「ああっ……イイっ……すごくっ……」  ユキの様子を上目遣いで確認したら、閉じられなくなった唇から花の蜜のような唾液が垂れている。 「感じているようだな……。さっきの言葉覚えているな?」  潤んだ瞳が最後の言葉を聞いて明晰な光でリョウを見て頷いた。  口から咽喉へと一気にユキのモノを挿れた、頬をすぼめながら。  と、同時に催淫剤入りのローションをたっぷりと垂らした指を一本だけ挿れてみた。 「んんっ……イイっ……とてもっ……」  オレのアドバイス通りに穴を開いている。というよりも、いきんでいるといった方が正確かも知れない。  これなら大丈夫そうだな……と、もう一本の指を埋めた。そして、先程埋めた中指で、前立腺を衝いた。 「ああ……んっ……何。コレっ……ダメっ……出ちゃうよぉ……」

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