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第12話
ユキの良い感じに緩んだ穴の中はとても居心地が良かった上に、キュウキュウと締め付けてくる。
直ぐに抜いても良かったのだが、不本意とはいえこれはショーだ。
下半身を繋げたままでユキの唇に派手なリップ音を立てて口づけをしつつ、舌で薄めの唇を辿ったり、ユキの舌を絡めて空中に出して舌全体を平べったく舐めあったりした。
その濃厚な口づけの合間に、ごくごく小さな声で告げた。
「ユキ。今から抜くが、オレのが出て行っても、穴は出来るだけ開いたままにしておいてくれると嬉しいのだが」
チュクチュクと舌が絡まり合う音が胡蝶蘭の赤紫の蜜のように響いている。
その合間にユキは本番の直後とは思えないほどの明晰な眼差しを向けて来た。
「分かった。シオリお姉様のお金を取り戻すためでしょ?」
え?と思った。オレがこの舞台に上がった時から詩織莉さんの名前は一切呼ばれていない。確か、最高落札者紹介の時も「美男美女」という言葉で呼ばれていたような気がする。
お金の問題については司会者が言っていたのでユキが――といっても、あんなマッチョでサドッ気たっぷりの男の巨大なイチモツを初めての穴に挿れられるという差し迫った恐怖を覚えつつ、という異常事態の中でも――聞いていたのだろう。
オレなら、そちらの恐怖だけで頭の中がいっぱいいっぱいになってしまいそうなシュチュエーションだったが、ユキは違うらしい。
そして「穴を広げておく」というのが、どういう意味かを即座に理解したのにも驚きだった、良い意味で。
どうせなら観客席の様子も把握した上で最も効果的なタイミングでと思って、キスをいったん止めて、乳首を扇情的に転がしながら体位を少し変えた。
最前列の詩織莉さんは先程と同じように氷の女王様然として座っていた。
その横では美容外科の院長先生は股間にジャニー○系の青年の頭が上下している。何をしているのかはお察しといった感じだったが、詩織莉さん側ではない方向から、先程舞台に居たマッチョ男がテーブルの台のところに足を上げさせて、腰を遣っている。
ジャニー○君の3Pの願いは――面子は入れ替わっているものの――叶ったということかと皮肉な思いで見ていた。ただ、彼の望みは自分も突っ込みたいというモノだったハズだが。
冷然とした笑みを浮かべてヘンリーⅣのグラスを傾けている詩織莉さんと視線が合った。
その綺麗な顔は普段通りだったが、オレとまだ繋がっているユキと何となく似ているような気がした。
全体的に和風で繊細な顔立ちとか華奢な感じが。
ユキはまだ「王女様」といった風情だが、詩織莉さんは「女王様」の落ち着きも備えてはいるものの。
それに「シオリお姉さま」とユキは確かに言っていた。
まあ、その件は後で聞くことにして――何やら「お持ち帰り」の権利も得たらしいので――会場を見まわすと、ユキに高値を付けていたサド風の男などを始めとして、舞台の上を見ている人間が半分程度で、残りはお愉しみ中といった感じだった。
どうやら、二次会というのは、こういう乱交パーティのことなのだろう。会場にいた「いかにも」なダミ声のお姐さんも堅そうな尻を出してテーブルにへばりついて客の中にはいなかったと思しき短髪かつ真珠入りと思しき男根を迎え入れていた。
その他も似たような光景が繰り広げられていたし、ユキほどの綺麗さではないものの、それなりに整った若い男性が全裸で高級そうなスーツの――といってもその布地は贅肉ではちきれんばかりだったが――股間に尻を上下に振っていたり、乳首をローターで弄られたりしていた。
これ以上、場が乱れることは有っても逆はないと判断したオレは司会者に目配せをした。
「レディー・アンド・ジェントルメン!!主役のお二人のフィナーレで御座います。
お愉しみの最中ではありますが……、舞台の方へとご注目下されば幸いです!!」
レディスという複数形を使わずに、かつジェントルマンという単数でもなかったのである程度の英語力は持ち合わせているらしい。まあ、この場に「紳士たち」と呼ぶのに相応しい人間が居るとも思えなかったが。
「抜くぞ」
ユキも二人だけの会話の時とショーの役柄を演じている時のオレの声の違いは分かったような感じだった。
「やだっ……。熱くて大っきいの……もっと欲しいっ……ずっとこうやって……拓いていて欲しい。
それに、ココも寂しくなるっ……」
繋がったまま、しなやかな感じで赤紫の蘭の花の上で汗に濡れた上半身を観客に見えるように撓らせている様子も蠱惑的かつ冷静な感じだった。
そして、二つの乳首をユキが自分の指を扇のようにしてパラパラと転がすのも。
「あの子は正真正銘初めてだったのかな?」
サドっ気全開という感じの客が会場の淫らに濡れた熱い空気を冷やすような感じで司会者に聞いていた。
「初めてでございます。な、お前なら分かるだろう、ナカジマ」
司会者にいきなり名前を呼ばれたマッチョ男は振りたくっていた腰を止めている。
その広い腰にジャニー○系の青年の細い指が急かすように添えられていた。
「はい。指二本挿れるのがやっとの有様でしたので。
正直、俺……じゃない、私の息子が無事挿っても血だらけになるんじゃないかとか。
まあ、その方が滑りが良くなってイイかとも思いましたがね。
このお客さまのように、色々な大きさの男根を知っている熟れた穴もそれはそれで味がありますが、初めての硬さも捨て難いと思ったものです」
そのどう見てもカタギとは思えない「紳士」も納得したような感じで頷いていた。
「抜く、ぞ」
ユキの腰を高く掲げた後に繋がりを解いた。
すると、ユキの桃のようなお尻の真ん中がさらに上へと掲げられる。赤紫の蘭の上に付いた手と膝が蘭よりも綺麗な色に染まっている。
そして、紅く染まった穴がヒクリと動いたかと思うと、紅色の蘭の花の蜜のように白い液が細い流れを作って前へと伝っていった。
会場からの嘆声が漏れている中で。
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